2009.11.05
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第209回
ネットも使いこなせないバカ企業 その2
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 さて先週の『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』(幻冬舎新書)の第一章を紹介する試みの続きである。
 mixiが流行りだしたばかりの頃の話なのだが、わたしの友人だった女性に、mixiを完全なる「出会い系サイト」として利用してた人物がいた。
 正直いって、あまり性質の良くない女だった。人につまらない物を高額で売りつけたりしていた(貧乏そうだったから、そのときは仕方なく買い取った)。けれど続けざまにやられたらさすがにうんざりもする。それで絶縁した。
 一方、わたしはといえば、当時はmixiの「マイミク」(念のため補足。mixiでは他のユーザと相互に「友人」関係の登録を行った相手を“マイミク”と称する)を「顔見知り限定です」と表明していた。
 というのも、なんらかの折に自分ところの日記が“炎上”(これも念のため補足。インターネット上でブログやmixiの日記などに外部から批判が集中する状態を“炎上”という)するのを恐れ、非常に用心深かったのである。で、この時期はまだ、わたしが20年近くにわたってお付き合いいただいていた株式会社アスキー(現・アスキー・メディアワークス)の編集者たちが、けっこうmixiで日記書いたりしてたから、ようするに内輪話をするのに使っていた。インターネットというオープンな場でありながら、初期のmixiが、かなりクローズドなところが逆に便利だった。
 だからまあ、後に絶縁した女のmixiの使い方を知ったときに、唖然としたのだ。その女の趣味はサッカーだったのだが、それをネタに、男をゲットしようとして必死に頑張っていたようだった。だが、必ずすぐフラれる。これは推察に過ぎないかもしれないが、彼女の「たかり癖」のせいだとわたしは思う。彼女自身は「自分の容姿に問題があるから」とか「年が年だから」とかいろいろ言ってたけど、わたしは心のなかで思っていた。問題はあなたの性格だと。  さてそのSNSの代表格の「mixi」であるが、夏野さんはこれを「社会的インフラになり得ないのではないか」と予言している。ちなみにmixiは収入のほどんどを広告に頼るビジネスモデルを展開してるそうなんだが、 2009年3月には、120億円の売上で37億円の利益を出したと書いてある。
 わたしは十分にmixiは儲かっていると受け止めているが、夏野氏によると、世間はそうは受け止めていないらしい。なんでも夏野氏の著書によれば、mixiの時価総額は700億円(2009年6月)だそうだ。だからわたしはちょっと悪いことも考えた。mixiの株の「空売り」をかけるのである。たぶん、儲かる。
 まあ、ここでちょっと息抜きに余談でもしよう。
 わたしはmixiの笠原社長とも一度だけお会いしたことがある。相手は、正直、迷惑そうだった。mixiの立ち上げ段階の頃の取材のときは、笠原社長の判断ではないのかもしれないけど、mixiは積極的に取材を受けてくれた。ただ、密着取材をした相手は笠原社長本人ではなかった。とても美しい女性社員であった。
 その人たちとなぜか一緒に「地引網」をやった。
 いまはあまりチェックしていないから知らないが、mixiは当時、こうした自社製のコンテンツを充実させるべく、さまざまなコミュニティのイベントに社員を参加させ、レポートを書いてアップしていた。
で、mixiのコミュニティに「地引網。地引けこの想い。」というのがあって、その日はこのコミュの第1回目の「地引網」イベントの日だったのである。  それでわたしも地引網に参加する次第となったのだが、やったときはこう思った。
「釣りって、面倒臭い趣味だったんだな」
と。なぜなら、30分もかからぬうちに、新鮮なアジがわんさかと獲れたのである。ちなみに5月。アジが旬の季節で、場所は千葉だった。それで2度目はごく私的に参加してみたのだが、飽きた。それでやっぱり釣りに戻った。
 ここで話は笠原社長が「迷惑そう」だったかという話に戻る。笠原社長とお会いできたのは完全なる偶然で、ネット界隈では著名な神田敏晶氏がなぜか突然、第21回参議院議員選挙に立候補したのがきっかけだった。
 対抗馬はドクター中松とか、日本スマイル党のマック赤坂――政策を語る場でスマイルトレーニングの手法を語るという、何がしたいのかさっぱりわからん人たちが集まっていた。
 で、神田さんと笠原社長はネット界隈の有名人同士ということで、面識があった。しかも神田さんが構えた選挙事務所とmixiの当時の本社が歩いて数分の場所にあったのである。それで応援のお願いに伺った。
 わたしは老いたウグイス嬢という、全然得票に結びつかないというか、むしろそれを遠ざける格好で、赴いた。そこで笠原社長と初めてお会いできたわけだが、実に迷惑そうだったのは記憶に焼きついている。顔が語っていたもの。
「早く帰ってくれ」
 もっとも神田さんは全然メゲてなかった。精神力強い人なのだろう。ちなみに神田さんは落選している。
 さて、余談はこれくらいにして、そのmixi、なんで展望が明るくないのか。これが重要だ。夏野氏はこのように断言している。
「成功の秘訣は、SNSが持つ『出会い系サイト』としての力が大きい。皆はあまり認めたがらないが、ハッキリ言ってmixiを始めとするSNSは『出会い系』だ。」
 わたしは「そうなのか、夏野氏がそう言うなら、やっぱり間違いはないんだろう」とは思った。あまりにも自分の使い方とかけ離れていたから、断言されるまでいまひとつ確信が持てなかったのだが、夏野氏の言葉なら信じられた。冗談抜きでわからなかったのである。ネットでまで“男探し”したいという女の気持ち、あるいは逆の男性側の気持ちが。
 しかしこれは、あるいはわたしがmixiに浸っていた時期、大量に何種類もの抗うつ剤と、強度の不眠ということから統合失調症の安定剤を睡眠薬代わりに最大量出されていたのと無関係ではないのかもしれない。それは“セロトニン再取り込み阻害薬”と分類される種類の薬物で、大量摂取するとドーパミンが放出されなくなるそうだ。つまり、全然“ときめかない”。いつもぼんやりと幸せな感じになる。すなわち“解脱の境地”に限りなく近い。興味深い男の人がいるなと思っても、いるなとその存在を認識するだけにとどまる。そうこうしているうちに40歳を過ぎたから、いまや睡眠薬以外は服用していないのに、ナチュラルに解脱の境地である。恋は遠い昔の花火。  


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山崎マキコ自画像
山崎マキコ
1967年福島県生まれ。明治大学在学中、『健康ソフトハウス物語』でライターデビュー。パソコン雑誌を中心に活躍する。小説は別冊文藝春秋に連載された『ためらいもイエス』のほか、『マリモ』『さよなら、スナフキン』『声だけが耳に残る』。笑いと涙を誘うマキコ節には誰もがやみつきになる。『日本の論点』創刊時、「パソコンのプロ」として索引の作成を担当していた。その当時の編集部の様子はエッセイ集『恋愛音痴』に活写されている。
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