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ここで夏野さんの話に戻ろう。なぜ『出会い系サイト』としての力が大きいmixiが駄目になりつつあるか?
それはこういう裏事情があったかららしい。以下、引用。
そこへ、2009年2月〜4月にかけて、SNS運営6社に警視庁から「出会い系サイトと同様の書き込み」の削除要請が来てしまった。
(略)
そういう負の面がクローズアップされてしまったこともあり、SNSは今後「社会的インフラ」と呼べる存在になるかどうか、微妙なところに来ていると言える。
引用、以上。けっこうディープなネットユーザー気取りでいたけど、これは知らなかった。恥ずかしいな。たしかにこれをやられたのでは、最大の「売り」が消えてしまうだろう。もっとも、わたし個人に関してはmixiを使い続けるが。だって関係ないもの、「出会い」を求めてないから。皆様にもお伝えしたいくらいだ。「解脱すると、楽ですよ」と。
ま、余計なお世話ですね。「産めよ増やせよ地に満ちよ」と、神もアブラハムを通して人類に命じたことだし。よし、皆さん、解脱せずに励んでください。
では、ウェブで商売を成功させるにはどうしたらよいかという話に移ろう。すでにここが本全体の総括かなと個人的には思っている部分だ。
夏野さんはこのように読者たちに命じている。
「当たり前のことを当たり前にやる」
つまり、インターネットは単なるツールに過ぎないんだから、商売の本質は変わらないと、夏野さんは語っているわけだ。リアルビジネスとウェブビジネスはまったく同じものである、と。
引用してみよう。
なのに、世の中はインターネットが一般的に何かやろうという安易な発想でウェブビジネスを始める企業が多すぎる。まるで、ウェブを使えば悪い点を覆い隠し、何もかもが成功に導かれると思っているかのように。
(略)
「ウェブだから何か新しいことをやろう」という発想ではなく、「自分のビジネスをウェブを使ってどう強めるか」の方が重要なのだ。
引用、以上。そう、インターネットを魔法のツールかなにかと勘違いしている企業が多すぎるのだ。それ以前に、自分自身でインターネットをディープに使いこなしてみるとよい。とくに企業の上層部の人間にこそ、それを行っていただきたいものだ。だからサイトにたどり着くなり自社製品をフラッシュで延々と眺めさせるサイトなぞを制作させてしまうのだ。ちなみに、夏野氏の著書にも、似たようなサイトを企業名を伏せて紹介しているが、おそらくはわたしと同じ家電メーカーではないかと推察する。
夏野氏は続けざまに「バカ企業」を責め立て続ける。次の言葉もかなり強烈である。
「リアルビジネスでダメな人はウェブでもダメ」
これはあらゆることに通じる真実ではないかと思うので、少しネットとは関係ない話に飛ぶが、あるタクシードライバーの話をさせていただく。
ある晩、物書きの先輩に呼び出されて、歌舞伎町のゴールデン街に赴いた。念のため補足しとくと、「ゴールデン街」というのは、ちょっとしたつまみを出すだけで延々と飲むだけの店が多くて、少し年配の文化人の方々には戦後の雰囲気がそのまま残っているのでとても愛されている。まあ「文壇バー」といってさしつかえない店が多々残っているのである。全共闘世代などは、とくにここが大好きで、熱い議論を繰り広げたあげく、喧嘩をおっぱじめたりするほどだ。後に知ったことだが、佐木隆三氏や中上健次氏などが常連として知られていたらしい。古くは、太宰治や井伏鱒二なんかもご愛用だったそうだ。それで、この界隈を延々、はしご酒するのが先輩方のゴールデン街の使い方なのである。すると当然、終電乗り逃してタクシーで帰る次第となる。
しかしここで困った事態が待っていた。
首都圏にはタクシー業界の大手四社と呼ばれる『大和自動車』『日本交通』『帝都自動車』『国際自動車』がある。社員教育が徹底してるし、車種は高級車だし、当然カーナビとかも早々と装備してたし、タクシーに乗るなら四社に限るとわたしは常々思っている。
だが、この界隈には、四社は絶対近寄ってこない。
なぜかというと、性質の悪い酔っ払いの客が多いせいで、トラブルが多いからである。トラブルが生じると「指導」が入り、これがドライバーの減点の対象になるらしい。
いたしかたないから、忘れもしない「共×無線」のタクシーに乗った。ドライバーは必死にドアをあけて手招きしてたから、疲れていたし、まあいいかあと思ったのが運のつきだったと思う。
後に年季の入ったタクシードライバーの人が教えてくれのだが、「居眠り×都、なんとか×交」と四社の名前が延々続いて、最後にこうシメる。「死んでも乗るな、共×無線」。古くからタクシードライバーたちに伝わる「格言」なんだそうだ。
それを知らず「共×無線」に乗ったわたしは、若いタクシードライバーの男の子から怒涛のごとく語りかけられた。
「俺っスねえ、3カ月前までは歌舞伎町でホストやってたんスよ! あ、だから新宿は詳しいから道は任せてください。でもね、ホストって儲かんないんですよねー。それでタクシーに鞍替えしたんス」
しかしわたしはそこで内心、首をひねり続けていた。この道は、いつも通る道とまったく違う。これは、抜け道だろうか? するとそのうち、怒涛のごとく喋っていた男の子が無言になった。そしてハンドルを握り締めて叫んだ。
「お客さん、僕はいま、どこを走っているんでしょうかー!」
しかたないので、わたしが勘を頼ってナビをした。ようよう、いつもの晴海通りに出て銀座が見えてきたときは腰がぬけるほどホッとした。
この子、ホストでも駄目だったみたいだけど、タクシーでも駄目だろうなと思った。普通、4000円ぐらいで帰ってこれるところが、6000円以上かかった。こういう場合、ユーザーは、東京タクシー近代化センター(現在は財団法人・東京タクシーセンター)に通報していい権利がある。けれどそれもする気になれなかった。なぜなら、この青年の末路が見えたような気がしたからである。
リアルで駄目な人はアンリアルでも駄目。駄目な人は、なにやってもどこ行っても駄目。そういうことだとわたしは思う。
さて夏野氏の話に戻ろう。以下、引用。
やろうとしている新しい事業をもともと向いていない人に担当させる、あるいは情報が集まっているからと企業がとりあえず新規事業をスタートさせるのは、バブル期の多角化経営と同じことだ。不動産のノウハウも持たないのに、ホテル経営に乗り出した会社がたくさん存在していたのを思い出してほしい。
(略)
何か新しいことをやるのであれば、基本的なことを言うようだが「自分やその会社がその新しい事業に向いているか否か」「自分や会社にいる人材が向いている分野、仕事、やり方」をきちんと追求することが大前提になる。
そのツールとしてインターネットを使い、事業を急速に展開していけば何も問題はない。
しかし、グーグルがもたらした「超情報化社会」においては、それを考える前に情報だけ集まってしまうのだから、自分たちの適性を考えずに手を出して、結局失敗する。そんな例を、大企業からベンチャー企業に至るまで数えきれないほど目にしてきた。
引用、以上。いかがだろうか、まったくの正論だと思いませんか?
ここでわたしは再びあのタクシードライバーの男の子を思い出す。あの子が考えていたのは「楽してお金が欲しい」だったんじゃないのかと。適正とか、興味とか、そんなのまったく関係なしに、だ。ホストを目指したのも、若い女の子とどんちゃん騒ぎしていれば儲かるというイメージだけ、タクシードライバーを選んだのも、着け待ちのあいだ、ケータイで友達とメールの交換したりmixiに書き込みしたりできる――楽して儲けられる商売。インターネットで失敗した企業というのも、彼と同じく「楽をして儲けられる商売」というイメージを持っていたんじゃないかと、私見に過ぎないけど思う。
それではどうすればのいのかという疑問に対して、夏野氏はこう断言してる。
「リアルの世界でやっていることは、すべてウェブでもやってください」
厳しい言葉だけど、まったくその通りとしか言えないだろう。
ここからさらに厳しい言葉が続く。この読者のなかに万が一インターネットに安直に手を出して失敗した方々がいたとしたら、まず覚悟を決めて、それから夏野氏のお言葉をご拝読ください。以下、引用。
だから、とにもかくにもリアルの店舗でやってきたことをウェブでも最低限やってから、ウェブ独自の展開として次の手を考えればいい。ウェブビジネスでは、顧客の行動履歴なども全部記録が取れるので、クリエイティブな考え方の助けとなってくれるだろう。
例えば、アマゾンのビジネスの仕方がもてはやされているからといって、購買意欲をそそるためのレコメンド機能を最初から装備しようと思っても、それはまったくの無駄。
(略)
商品の見やすさや目当ての商品を見つけやすくすること、丁寧な梱包技術、素早い発送システムなど、レコメンド機能云々といった付加価値を考える段階まで到達していないことを自覚した方がいい会社が、ザッと見渡しただけでもウェブ上には、数多く見受けられる。
引用、以上。念のため補足しとくと、レコメンドというのは利用者が関心を持ちそうな情報を推薦する手法」のことである。たとえばアマゾンで、わたしは一時期、「格差社会」の問題に関する本ばかり買い集めていた時期がある。するとレコメンド機能が働いて、次にアクセスしたときに「格差問題」に関する新しい書籍をこれでもかと紹介してくる。つい、手を出す。おかげでいま、わが社の本棚は格差問題の新書や書籍がずいぶんとスペースをくっている。
さて、いかがだろうか。ぐうの音も出ない企業もあるのではないだろうか。
たぶん、来週がこのシリーズの最終回なので、もう少しお付き合いください。
つづく
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