二〇〇七年(平成一九年)六月一四日、安倍首相(当時)は、参議院厚生労働委員会で、年金記録漏れ問題の対応について問われ、「制度や保険をまたがる情報を統一して社会保障番号のようなものを作れば、処理も容易になり、国民にとっても自分の情報が確かめやすい。早急に検討したい」と答えた。 この答弁は、〇六年九月、内閣官房が発表した、「『社会保障番号』に関する実務的な議論の整理について」(『内閣官房資料』)の内容を一部紹介しただけのことで、年金記録漏れ対策として考え出したことではない。これに沿って、政府・与党は、年金や医療保険、介護保険の個人情報を一元的に管理する社会保障番号を二〇一一〜二〇一二年度を目途に導入し、「国民サービスカード」(仮称)を全国民に一枚ずつ配布することを検討しているという。 〇七年八月末現在、制度の詳しい内容が決まっているわけではないので、具体的な検討を十分にできる段階ではないが、いまの時点でわかっているメリットとデメリットを検証してみよう。 社会保障番号は、現在ある基礎年金番号(二〇歳以上を対象)にかぎらず、〇歳まで付番対象を拡大する。在留資格のある外国人を含む点で、日本国内に在住する日本人にかぎる住民票コードより対象範囲は広い。 ところで、社会保障番号にはどんなメリットがあるのか。 『内閣官房資料』では、基礎年金番号と雇用保険被保険者番号の入力作業において、本人確認の突き合わせが「簡易迅速」になるという。 しかし、これまでの突き合わせ作業が特別に複雑だったわけではない。年金納付記録の記録漏れはヒューマンエラーの問題なのだから、社会保障番号にすれば解決するということではない。『内閣官房資料』でも、年間約二〇〇万円を減らすくらいのことでしかないのである。 また、一つの番号で社会保険や労働保険関係の手続や問い合わせをすることができるという。 しかし、個人の立場からすれば、今回の記録漏れ問題のような制度の信頼性を揺るがす大問題が発生するようなことでもなければ、ほとんどの人は問い合わせなどしない。番号制やICカード化による情報管理に技術的についていけない国民も相当数いる。そうだとすると、むしろこれらの業務は市町村が担うようにした方が、国民にとってはメリットが大きいだろう。 結局、年金・医療保険・介護保険に限定すると、国民等のメリットははっきりしない。そこで、『内閣官房資料』では社会保障関係以外に話が広がり、「名寄せ手段」としてのメリットをあげるしかなくなっているのだ。
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