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論 点 「高齢社会の税制をどうすべきか」 2009年版
消費税を上げ老後の安心を保障したほうが長期的には景気浮揚につながる
[税制改革についての基礎知識] >>>

いとう・もとしげ
伊藤元重 (東京大学大学院教授)
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消費税を上げなければ国はぼろぼろになる
 一国の税制は国のあるべき長期の姿を反映したものでなくてはいけない。残念ながら、現在行われている税制論議の多くは、この「長期」という視点を欠いている。消費税率の引き上げを避けることはできない。これは誰も否定しない。問題はその引き上げについて、どのような根拠で、いつ、そしてどの程度の規模で行うのかということだ。
 今の消費税引き上げ論議はあまり健全ではない。二〇一一年を目標としたプライマリーバランスの黒字化を実現するため、そして基礎年金の半分を税で負担するため、という議論があるが、そうした目先の目標や帳簿上の財政事情で消費税率引き上げが議論されても、説得性は弱い。
 安易に消費税を引き上げると景気が悪化する、と消費税引き上げに慎重な意見がある。しかし、それではいつ消費税を引き上げるのか、という話になる。景気がよくなれば法人税などの増収があり、消費税率の引き上げを急ぐ理由がなくなる。景気が悪くなると、消費税率を引き上げることはできない。これでは、消費税率は永遠に上げられない。
 消費税を安易に上げることに賛成できないのは、歳出の無駄が多すぎるからだ、という議論もある。たしかに歳出改革は重要だ。しかし、歳出の無駄が完全になくなるまで消費税率を上げないという「消費税捕虜論」では、これまた永遠に消費税を上げることはできない。政府の無駄を削減することが、消費税引き上げを遅らせる理由に使われているとしか思われない。
 消費税は、日本の長期の姿に基づいて議論する必要がある。少子高齢化が進む中で、今のような状態では、医療・年金・介護などの社会保障はぼろぼろになってしまう。教育だってじり貧だ。それでよいのだろうか。無駄な歳出はカットしなければいけないが、最近は必要な歳出ができない状態にある。小さな政府か大きな政府か、という単純な議論にはしたくないが、今の状態で消費税を上げられなければ、社会保障はぼろぼろになるだろう。国民がそんな状態を望んでいるとは思われない。


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いとう・もとしげ
伊藤元重

1951年静岡県生まれ。東京大学経済学部卒業後、米国ロチェスター大学大学院経済研究科博士課程修了。東京大学助教授を経て、93年同大学教授に就任。国際経済学が専門だが、流通問題の研究でも知られる。2006年より総合研究開発機構(NIRA)理事長を務める。『日本の物価はなぜ高いのか』『挑戦する流通』(石橋湛山賞)など流通関係の著書のほか、『入門経済学』『ミクロ経済学』『マクロ経済学』『ゼミナール国際経済入門』、『大変化』など多くの著書がある。



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