二〇〇八年(平成二〇年)夏の洞爺湖サミットでとくに印象的だったのは、CO2の排出規制のために原子力発電が有効という認識が当たり前のようになっていたことだ。しかし思い起こしてほしい。IPCC(気候変動に関する政府間委員会)第三報告書ではCO2削減のために原子力を使うのは避けるべきとされていたはずだ。実際、将来の世代にとって大きな負の遺産となる放射性廃棄物の問題など、未解決案件は山積している。 元アラスカ大学教授の赤祖父俊一氏は近著の中で、IPCC設立の動機には英国での原子力発電増強政策が関わっているとしている。通常は「陰謀説」と見られがちなこのような意見にも十分に頷けるような、サミットの展開となった。 直接の背景は〇七年に出たIPCC第四次報告書だ。この報告書は、現在の地球平均気温上昇や極端気象の主原因をCO2増加に帰した。これを受けて、「温暖化の科学は収束した。もう科学的な検討は必要ない」という意見さえ見られる。筆者はIPCC第四次報告書の審査に与った経験から、地球気候についての科学的な検討はむしろこれから本格的になると確信する。気候システムの複雑さや思いもかけない挙動がさらにはっきりしてきたからだ。今後、CO2を中心とした古典的な温暖化論は、多くの気候因子を考える包括的な気候変動論に取って代わられるだろう。それに従って環境政策も変わらねばならない。
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