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論 点 「バイオエタノールは損か得か」 2009年版
休耕田の稲から作るバイオエタノールは、食料危機や環境破壊に関係なし
[バイオ燃料についての基礎知識] >>>

もりた・しげのり
森田茂紀 (東京大学大学院教授)
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エネルギーと食料の競合は資源の奪い合い
 地球温暖化対策や石油代替エネルギーの一つとして、バイオエタノールの生産と利用が世界的に進められており、世界の生産量は二〇〇〇年(平成一二年)の約三〇〇〇万キロリットルから〇七年の約六三〇〇万キロリットルへ急激に増加した。日本も、二〇三〇年までに六〇〇万キロリットルのバイオエタノールを供給することを目標としており、これが達成できれば、日本全国でE10(ガソリンに一〇パーセントのバイオエタノールを混合すること)が実施できる。
 このようなバイオエタノールブームの中、今度はバッシングが起こっている。食料をバイオエタノール原料とすると、貧困層が食料を手に入れられなくなるという批判である。バイオエタノールだけが原因とは考えられないが、確かに最近、穀物の国際価格は急上昇し、世界各地で食料をめぐる問題が起こっている。
 バイオエタノールは原料の種類によって三種類に分類されるが、食料となりうる糖質系原料(サトウキビ・テンサイ)およびデンプン系原料(トウモロコシ・コムギ・イモ類など)ではなく、セルロース系原料(スイッチグラス・ミスカンサス・麦藁・稲藁・籾殻・廃材・古紙など)からエタノールを製造するための技術開発に世界が向かい始めている。ただし、セルロース系原料植物を栽培するのに農地を使うと、本来であれば、そこで生産される分の食料が生産できなくなるので、それだけでは問題解決にならない。そうかといって、森林を切り開いて原料植物を栽培するための農地を広げると、二酸化炭素を放出することになり、環境に負荷をかけてしまう。このように、食料とエネルギーとの競合の問題は、じつは農地、また水や肥料を含めた有限な資源の奪い合いというところに本質がある。
 バイオエタノールをめぐるこうした状況の中で、日本はどのような道を選択したらよいのであろうか。東京大学大学院農学生命科学研究科にできた、通称、アグリコクーンという教育研究組織に所属する「農学におけるバイオマス利用研究フォーラムグループ」の活動の中から、稲のバイオエタノール化を通じて、持続的な日本社会を構築する「イネイネ・日本」プロジェクトが立ち上がった。以下、このプロジェクトの趣旨を紹介させていただく。


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もりた・しげのり
森田茂紀

1954年神奈川県生まれ。東京大学農学部農業生物学科卒。同大大学院農学研究科農業生物学専攻博士課程修了。専門は作物栽培学。現在、同大大学院教授。水稲や畑作物の根系や土壌微生物に関する研究を進める。「イネイネ・日本」プロジェクトを立ち上げ、日本型バイオマス利用システムとしてのイネのバイオエタノール化に取り組み、農村振興と持続可能社会の構築を目指す。著書に『栽培学』『根のデザイン』『根の発育学』などがある。



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