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論 点 「川とどうつき合うか」 2009年版
川の力を閉じ込めようとする「防災」の発想が洪水の被害を大きくする
[河川行政についての基礎知識] >>>

みやもと・ひろし
宮本博司 (前淀川水系流域委員会委員長)
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もう洪水で多数の死者はでない?
 戦後、我が国は次々と大きな台風に襲われ、そのたびに数百人から数千人の死者がでました。しかし一九五九年(昭和三四年)の伊勢湾台風による死者約五〇〇〇人を最後に、水害による死者の数は激減しています。「これは、戦後の河川改修やダム建設の進捗のお陰である。もう我が国では水害で多くの人命が失われることはない」という声を聞いたことがあります。とんでもない話です。あなたも「自分は水害で死ぬなんてことはあり得ない」と思っているのではありませんか。
 二〇〇五年八月末、米国南東部を襲った超大型ハリケーン・カトリーナで、ニューオリンズでは堤防の決壊により一瞬にして一〇〇〇人を超える住民の生命が失われました。その人たちの中に、前夜ベッドに入るとき、近づいてくるハリケーンによって堤防が決壊し、氾濫流に流されて死ぬかもしれないと思った人がいたでしょうか。誰一人いなかったと思います。しかし現実には翌日、一〇〇〇人を超える方が亡くなったのです。大災害は起こってはじめて、それが現実に起こるものなのだということを実感させられるのです。
 ニューオリンズの街は川や海の堤防から七〜八メートル低いところにありました。大阪の街は、淀川の堤防のてっぺんから一〇メートル、大和川の堤防のてっぺんから二〇メートル下に位置しています。さらに、そこに地下鉄が走り、地下街が広がっています。淀川や大和川の堤防が決壊したときの深刻さは、ニューオリンズの比ではありません。大阪だけではなく、我が国の多くの都市は沖積平野や扇状地に形成されています。ニューオリンズの惨状は、決して人ごとではないのです。我が国で、水害によって多くの人命が失われる危険性は、小さくなっているどころか、過去にも増して高まっています。


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みやもと・ひろし
宮本博司

1952年京都府生まれ。京都大学大学院修士課程土木工学専攻修了。78年に旧建設省入省、技官として河川行政一筋に取り組む。河川開発課課長補佐などを経て、99年国交省近畿地方整備局淀川河川事務所長として淀川水系流域委員会の立ち上げに尽力する。現在は、国土交通省の外部有識者会議、前淀川水系流域委員会委員長として淀川水系の「河川整備計画の案」の策定について琵琶湖・淀川水系で、四つのダム整備を行う国の計画に対し、河川工学の観点から発言を続けている。



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