戦後、我が国は次々と大きな台風に襲われ、そのたびに数百人から数千人の死者がでました。しかし一九五九年(昭和三四年)の伊勢湾台風による死者約五〇〇〇人を最後に、水害による死者の数は激減しています。「これは、戦後の河川改修やダム建設の進捗のお陰である。もう我が国では水害で多くの人命が失われることはない」という声を聞いたことがあります。とんでもない話です。あなたも「自分は水害で死ぬなんてことはあり得ない」と思っているのではありませんか。 二〇〇五年八月末、米国南東部を襲った超大型ハリケーン・カトリーナで、ニューオリンズでは堤防の決壊により一瞬にして一〇〇〇人を超える住民の生命が失われました。その人たちの中に、前夜ベッドに入るとき、近づいてくるハリケーンによって堤防が決壊し、氾濫流に流されて死ぬかもしれないと思った人がいたでしょうか。誰一人いなかったと思います。しかし現実には翌日、一〇〇〇人を超える方が亡くなったのです。大災害は起こってはじめて、それが現実に起こるものなのだということを実感させられるのです。 ニューオリンズの街は川や海の堤防から七〜八メートル低いところにありました。大阪の街は、淀川の堤防のてっぺんから一〇メートル、大和川の堤防のてっぺんから二〇メートル下に位置しています。さらに、そこに地下鉄が走り、地下街が広がっています。淀川や大和川の堤防が決壊したときの深刻さは、ニューオリンズの比ではありません。大阪だけではなく、我が国の多くの都市は沖積平野や扇状地に形成されています。ニューオリンズの惨状は、決して人ごとではないのです。我が国で、水害によって多くの人命が失われる危険性は、小さくなっているどころか、過去にも増して高まっています。
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