最近うつ病が爆発的に増えているらしい。一般住民を対象とした調査では一五人に一人がうつ病を経験しているとされるし、厚労省の統計でもうつ病による受診は一〇年間で二倍以上に増えたという。別に統計を持ち出すまでもなく、うつ病で苦しんでいる、長期欠勤している、という人を身近にみつけることは容易だろう。 その一方で精神科医からは、最近のうつ病は昔と病像が違ってきたという声を聞く。かつては「真面目で人に気を配りすぎて、うつ病になる」という論理が定着していて、「もっといい加減になってよいのですよ」というアドバイスが治療の基本とされてきた。しかし、最近はこれにぴったり当てはまるうつ病を見ることはむしろ少なくなり、古典的な治療技術もにわかには成立しない。自分を責め、過剰に反省するより、他者を批判し、自分の置かれた状況を呪う、これが本当にうつ病なのか、自称うつ病だが、客観的にみて違うんじゃないか、などと思わざるをえないケースも多い実態がある。これは時代の変化によってうつ病の表現形式が変わったためなのか? あるいはうつ病ではないものをうつ病とする過ちを犯しているのか? それがうつ病の見かけ上の増加につながっているのではないか? これらについて考えてみたい。 結論を先取りして言えば、この大半は米国精神医学会の診断基準が日本の医療界に定着したことによる論理的帰結である。しかも、それが世間一般に誤解されたまま伝わってしまったことが問題の本質ではないかと思われるのだ。
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