次に何かしでかすとすれば、彼だろうと思っていた。私だけではない。親方衆も案じていたし、好角家の先輩方も番記者も、みんながそう懸念していたら、案の定だった。二〇〇八年(平成二〇年)八月に大麻所持容疑で逮捕された元幕内若ノ鵬の振る舞いは、それくらい目に余っていた。 法を犯す前から、力士道をとっくに踏み外していた。とにかく相撲そのものがめちゃくちゃなのだ。荒削りとか発展途上とか、そういう次元ではない。グーパンチは出すわ、勝負がついているのに相手を小突くわ。レスリングの元ジュニア王者か何か知らないが、こいつ、どこのならず者だというような相撲を平気でとっていた。こんなこと、親方の監督が行き届いていればありえないことだ。いま思い返しても不愉快でならない。 部屋で教えられた相撲とは違う勝ち方で、はからずも白星を拾えば、親方に怒られるのを覚悟して神妙な顔つきで勝ち名乗りを受けるものだ。若ノ鵬にそんな素振りは毫も見られなかった。悪びれるどころか、嬉々としていた。もとより勝てばいい、強ければいいという了見だったのだろう。 もっとも外国人が、相撲道のイロハも学ばないまま、初土俵から三年ほどで前頭筆頭にまでのし上がれば、勘違いするなというほうが無理かもしれない。全力士の範となるべき横綱からして、角界に一〇年近くもいるのに、勝てばいいという勘違いが直らないのだから。その横綱・朝青龍が若ノ鵬について「これから伸びる力士だったのに残念。相撲でも何をしてくるかわからないところがあった」なんてコメントしていたが、おいおい、土俵の内でも外でも、何をやらかすか一番わからないのはご自身だろうが! 薬物所持という犯罪行為は論外だが、若ノ鵬の一件で私が最もショックを受けたのは「力士がここまで俗化し、一般人になりさがってしまったのか」という現実である。報道によれば、若ノ鵬は六本木のクラブに出入りし、知り合った黒人から大麻を買ったという。なぜ六本木なんだ? なぜクラブなんだ? やっていることが、そこいらのちゃらちゃらしたアンチャンと同じじゃないか! 力士には力士の、イキな遊び方というものがあるだろう。大相撲の俗化を防ぎ、あるべき力士像を守るためにも、港区や新宿、渋谷あたりは力士の立ち入り禁止区域にしたいぐらいだ。遊ぶなら、台東、墨田限定で遊びなさい!
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