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論 点 「日本柔道は世界一になれるか」 2009年版
日本柔道は死なず――いま究めるべきは「術」の前に「道」である
[柔道の国際化についての基礎知識] >>>

やまぐち・かおり
山口 香 (筑波大学准教授)
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低迷する日本柔道と多様化する「JUDO」
 北京オリンピックは男女合わせて七個のメダル(金四、銀一、銅二)を獲得した。一四人が出場し、七個のメダルということは、五割のメダル獲得ということになり頑張ったという印象もある。しかしながら、男女の内訳を見てみると男が二個(金二)、女が五個(金二、銀一、銅二)であり、男子がいかに低迷したかを示している。特筆すべきはメダルに届かないばかりでなく、メダルに絡むところまでも進めずに敗れ去った選手が大半であったことだろう。日本柔道は弱くなってしまったのか、そうだとすればその原因はいったいどこにあるのかを検証し、今後日本の柔道が歩むべき道をいまこそ考えるときであろう。
 最近よく耳にするのは横文字の「JUDO」である。北京大会でも視聴者の多くはレスリングスタイルのJUDOに日本の柔道が苦戦を強いられたと考えている。たしかに柔道のスタイルが多様化していることは事実であるが、どんなスポーツにも国や選手独自のスタイルや戦術が存在し、違うスタイルの戦いだからこそ面白い。
 たとえばブラジルのサッカーは戦術というよりもフィジカルの強さと個人技でぐいぐい押してくる。ドイツは守りが堅く、後半の相手が疲れたところを攻めてくる。日本はパスをつなぎ、連携を大事にする。見ているほうとして面白いのはどれか、美しいサッカーはどれかという見解はあるにせよ、日本がブラジルのようなサッカーができるのかといえば無理だろうし、同じものを目指しても勝つことは難しい。ブラジル人は「ボールを持って生まれてくる」と言われるほど小さな頃から誰もがサッカーをする。そんな国の人たちと同じようなことをやっても勝てるわけがない。ではどうすればよいかといえば、日本選手がお互いの良さを活かし、相手の弱点を突いていく。日本のプレースタイルは、ブラジル人から見れば「あんなのはサッカーじゃない」と言われているかもしれない。
 なぜこんな例を出したかといえば、日本柔道はブラジルのサッカーと同じだと考えてほしいのである。いわば王道であり、海外の選手たちも日本柔道をリスペクト(尊敬)し憧れているのは間違いない。しかし彼らは、歴史、伝統、環境など明らかに差がある中で同じものを目指しても勝てないということも知っている。だから美しくない柔道とは知っていても、自分たちが勝つための戦略で戦っているのだ。それを「あんなのは柔道じゃない」と切り捨ててしまうのでは王者の見解とはいえないし、まして負けた人間が絶対に言ってはいけないことだろう。また、そういった考え方が選手に言い訳を与えてしまい、努力や研究を怠った結果が今回のオリンピックだろう。


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やまぐち・かおり
山口 香

1964年東京都生まれ。筑波大学卒。同大大学院体育学修士課程修了。78年に第1回全日本女子柔道体重別選手権で初優勝した後、87年まで10連覇を果たす。84年に世界選手権52キロ級で日本女子初の金メダルを獲得。88年ソウルオリンピックで銅メダルを獲得。「女三四郎」と呼ばれ、浦沢直樹の漫画「YAWARA!」のモデルともいわれる。89年、24歳で現役を引退後は、母校筑波大学女子柔道部監督、全日本柔道連盟の女子強化コーチなどを務める。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授。



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