 |
総説
視神経脊髄炎(NMO)とアクアポリン4抗体
三須 建郎
※1,2
藤原 一男
※1,2
糸山 泰人
※1
※1 東北大学大学院医学系研究科神経内科
※2 東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学
【キーワード】 neuromyelitis optica, multiple sclerosis, aquaporin 4, GFAP, necrosis
はじめに 視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,視神経と脊髄を病変の主座とする炎症性疾患であり,多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)の亜型と考えられてきた。Devicによって1894年に重症急性脊髄炎と視神経炎を起こした剖検例が初めて報告され,その弟子Gaultによってそれまでの類似症例がまとめられたことに端を発する1,2)。本邦では,Devic病は単相性に両側視神経炎と脊髄炎をきたす症例と捉え,再発例は視神経脊髄型多発性硬化症(optic spinal MS: OSMS)と呼んできた歴史的背景があるが,その臨床的特異性から両者は長い間古典的MSとの相違が議論されてきた。2004年,Mayo Clinicと東北大学との共同研究によって,欧米人NMOと日本人OSMSの血清中に中枢神経系の軟膜や血管周囲に特異的に反応するNMO-IgGが見出され,2005年にその対応抗原がアストロサイトの足突起に高密度に発現するアクアポリン4(AQP4)であることが報告された。われわれは2006年から2007年にかけて,世界に先駆けてNMOとAQP4抗体に関連する一連の研究を報告した。NMOの剖検脊髄病変における免疫組織学的検討では,本来AQP4の豊富な脊髄灰白質や白質の血管周囲においてAQP4は欠落し,同部位でグリア線維性酸性蛋白(glial fibrillary acidic protein: GFAP)も低下しておりアストロサイト障害が関連すること,またAQP4・GFAPの欠落とは対比的にミエリンは比較的保存されることを初めて報告し,NMO病変はMSの脱髄病変とは異なった病態を有することを明らかにした。当科で行ったAQP4抗体の検討では,AQP4抗体はNMOと診断された患者の91%,再発性視神経炎や横断性脊髄炎を呈したハイリスク群症例の85%で陽性であり,MSや対照群では0%であり,非常に強い疾患特異性を有している。今後は,疾患特異的なマーカーとして必須の検査となるだけでなく,AQP4やアストロサイトの障害から神経系の障害に導かれる病態機序の解明が期待されている。本稿では,その長く混沌としたNMOの研究史からAQP4抗体の発見に至った最新知見までに焦点を当ててみたい。
|
|
|
 |
クリックしただけでは課金されません。 価格は次ページ以降でご確認ください。

|
 |