●ヤギ
脊椎動物門 哺乳綱 偶蹄(ぐうてい)目 ウシ科


ザーネン
ザーネン


●原産地

家畜(かちく)ヤギの原種といわれているのはヨーロッパノヤギだといわれている。このほかノヤギやマーコールも原種ではないかといわれることもある。


ヨーロッパノヤギ 分布図
ヨーロッパノヤギ 


●品種

ウシと同じようにヤギにも乳用種、肉用種、乳肉兼用種がある。日本でよく飼育されていたのは乳用種のザーネンである。沖縄県では肉用のトカラヤギが飼育されている。またヤギには毛用種があり、モヘアを採取(さいしゅ)するためのアンゴラヤギやカシミア毛糸をとるカシミアヤギがいる。



●どこから手に入れるか
ペットショップで売っていることはほとんどないので、取りよせてもらうか、飼育している人や小動物園などから分けてもらう。

●どのようなヤギを選ぶか
かつては草むらなどにつないでおけば手間がかからず、乳を生産してくれるのでザーネンという品種がよく飼われていた。しかしザーネンは大きくなると90キロにもなるので、学校などで飼うにはトカラヤギなどの小型の品種がいいだろう。ヤギには雌雄ともに角があるが、角のない品種もある。おとなしいので角でつかれることはめったにないが、角のない品種を選ぶと事故の起こる心配がない。角のないヤギにはザーネンやアングロ・ヌビアンがある。



角のあるヤギ
角のあるヤギ
角のないヤギ
角のないヤギ



●必要なもの
えさ入れ、水入れ、寝小屋


えさ入れ
えさ入れ

●あったらいいもの
台や丸太、ブラシ


●ヤギは乾燥地帯の動物
ヤギの原種は地中海沿岸の乾燥地帯にすんでいた野生ヤギのヨーロッパノヤギなので、湿った環境はあまり好まない。えさなども雨などにぬれた葉やどろでよごれた葉などは好まない。

●ヤギは土手の草かり役
山村などではヤギを飼っている家が多かった。世話をするのはたいていその家のこどもで、朝、飼育小屋からつれ出して雑草におおわれた土手などにつないでおく。そして夕方また飼育小屋につれて帰るのだ。ヤギはおとなしく、しかもあつかいやすいので、こどもでも飼うことができるからだろう。また土手の草かりをしてくれるうえ、牛乳より脂肪球(しぼうきゅう)の小さな消化しやすい良質な乳を出すので喜ばれていた。フランスなどではヤギの乳から高級なチーズ(セーブル・ブランシェ)がつくられている。


ヤギの乳でつくったセーブルチーズ
ヤギの乳でつくったセーブルチーズ

●ヤギと同じようにヒツジも飼える
ヒツジもヤギと同じように飼育することができる。しかし品種によっては暑さに弱いものもいる。


ヒツジ
ヒツジ


1頭につき2畳(約2×2メートル)ぐらいの広さの飼育小屋を用意できるといいだろう。また小屋の周囲に運動場をつくる。運動場はさくで囲うことができないときには、杭(くい)に長いロープを結び、首輪(大型犬用)でヤギにつなぐ。その場合はえさ入れと水入れを飼育小屋に入れる。


飼育小屋の中のヤギ
飼育小屋の中のヤギ


●えさの種類
春から秋には、青草が手に入れば雑草や牧草、クズの葉やつたなどをあたえる。冬や青草が手に入らない場合には、ヘイキューブと呼ばれる草食動物用の固形飼料(イネ科の牧草とアルファルファをまぜて固めたもの)や野菜くず、ふすま(小麦などを製粉するときに残った部分で米のぬかに相当する。繊維質(せんいしつ)が多くふくまれているため家畜の飼料にされる)、また家畜用の塩や塩土をあたえる必要がある。


ヘイキューブ
ヘイキューブ
ふすま
ふすま
塩土
塩土

●えさのあたえかた
青草などは地面にまいたりしてもよいが、頭よりやや高い木の幹などにしばりつけてもいい。ヤギは幹がななめになっているような低木にのぼって葉などを食べることがある。



●そうじ
ふんや食べ残しを毎日そうじする。


ヤギのふん
ヤギのふん


●ブラッシング

春から初夏にかけて冬毛が大量に抜け落ちるので、ブラシをかけてやる。ブラッシングは毛のはえている方向にていねいに行う。



●秋が交尾期
ヤギは秋に交尾する。春に生まれたメスは半年後には発情し始める。しかし実際には繁殖(はんしょく)させるのは2才ぐらいからがよい。発情というのは繁殖の準備ができた証拠(しょうこ)で、よく鳴いたり尾をよくふるなどの動作が目立つようになる。また生殖器(せいしょくき)から粘液(ねんえき)を出すこともある。

●交尾から5カ月で出産
ヤギの妊娠(にんしん)期間は約5カ月。多くは1頭だがふたごや三つ子のこともある。出産は手がかからないことが多い。こどもといっしょに遊ぶことができる動物園などでも、入園者の間を歩きながら出産することがある。



こどものヤギ
こどものヤギ
こどものヤギの抱きかた
こどものヤギの抱きかた



●ヤギは木にのぼる
野生のヤギが生息していた地域は乾燥した環境で、地中海などは夏に乾燥が強くなる。山は茶褐色(ちゃかっしょく)になり草も枯れてしまうような場所だ。木には葉が残っていて野生のヤギは低木のななめになった幹などを伝って木にのぼり、枝先の葉などを食べていたと考えられる。また岩山などにもすんでいただろう。だからヤギにはもともと高いところに上がる習性があったのだろう。飼育していても台や丸太などにのぼることがよくある。



●日本最大のヤギの群れ
東京から南に千キロほどの太平洋上にうかぶ小笠原諸島(おがさわらしょとう)にはたくさんの島々があるが、人が住んでいるのは父島と母島の2つだけである。小笠原諸島の聟島(むこじま)列島には人は住んでいないが、数千頭のヤギの群れが見られることで知られている。このヤギは江戸時代の末ごろ、アメリカ合衆国の捕鯨船(ほげいせん)などが訪れたときに、難破(なんぱ)したときの食料として利用する目的で島に放されたといわれている。熱帯の樹木でおおわれていた聟島やとなりの媒島(なこうどじま)は、今では赤はだかの島になってしまっている。ヤギが島の木を食べつくしてしまったからだ。そのため島の周囲では雨が赤土の土砂(どしゃ)を押し流してがけくずれが起こっている。私がこの島を訪れたときには、わずかに残されたタコノキの下でクロアシアホウドリが繁殖していた。タコノキの葉はとげがありヤギも食べられないのかもしれない。野生化したヤギはシバのような草を食べて生き長らえている。


小笠原諸島のヤギ
小笠原諸島のヤギ