●キンギョ
脊椎動物門 魚綱 コイ目 コイ科


ワキン


●原産地

中国の揚子江(ようすこう)下流の地域で、昔から鑑賞(かんしょう)を目的に飼われていた。中国産のフナの仲間を改良したものと考えられている。日本へは1502年(室町(むろまち)時代の終わりごろ)に明(みん:当時の中国)からはじめて持ってこられたといわれている。


フナ分布図
フナ


●品種

主に中国と日本で品種改良が行われた。
中国で改良されたキンギョ
スイホウガン、チャキン、タンチョウ


スイホウガン
スイホウガン
スイホウガン
スイホウガン
タンチョウ
タンチョウ


日本で改良されたキンギョ
ワキン、リュウキン、デメキン、ランチュウ


ワキン
ワキン
ランチュウ
ランチュウ
デメキン
デメキン


●どこから手に入れるか
ペットショップやキンギョの専門店で買う。キンギョやコイのつりぼり、露天(ろてん)での金魚すくいでも手に入れることができるが、つり上げたり、すくったりしたものが健康なものかどうかはわからない。できるだけ専門の店で買うほうがよい。

●飼いやすい品種
活動的でよく泳ぐ品種
ワキン、シュブンキン、コメット
ゆったりと泳ぐ品種
タンチョウ、ランチュウ
あまり活動的でない品種
デメキン、スイホウガン

●健康なものの選びかた
店の水そうにいるキンギョをよく見て、白い点などがあるものがいないか確認する。もし1匹でもそのような魚がいたら、健康に見えるものにもうつっている可能性があるのでその店では買わないようにする。

●品種の組み合わせ
2匹以上をいっしょに水そうで飼うときには、できるだけ同じ品種で、同じ大きさのものにする。また別の品種をいっしょに飼う場合は、ワキンのように活発なものは同じように活発な品種どうしを組み合わせる。そうしないと繁殖(はんしょく)の時期に攻撃(こうげき)され、ひれなどがぼろぼろになってしまうことがある。



●必要なもの
水そう、砂か小石
●あったらいいもの
エアーポンプ、底面ろ過装置、ガラスのふた

飼育道具イラスト


●キンギョは初心者向き
ワキンなどのキンギョは飼いやすいように改良されているので、水温の管理やエアーレーションなどは特に必要がない。ただ、せまい水そうに多くのキンギョを飼うときには、エアーレーションが必要だ。またえさも雑食性なので飼いやすい。魚類の飼育をこれから始めようという人にすすめたい種類である。



●水そうの大きさ
水そうは30センチ、45センチ、60センチ以上など、さまざまな大きさのものが使える。ただし、30センチ水そうなどは小さいので小型のキンギョを2〜3匹ぐらいにする。

●小石や砂が水をきれいにしてくれる理由は
水そうには厚さが5センチぐらいになるように小石や砂を入れる。小石や砂がバクテリアのすみかになり、バクテリアはキンギョのはいせつ物を分解してくれる。水質を保つために小石などをしくことは重要なことである。

●グリーンウォーターはキンギョのための水
キンギョを買ってくる前に、水そうに水を入れ、日なたに数日置いておくと、クロレラが発生して水が緑色になる。これをグリーンウォーターといい、キンギョを飼うのに適した水だ。



グリーンウォーターをつくる
グリーンウォーターをつくる
グリーンウォーターができた
グリーンウォーターができた


●水草は酸素ボンベ

ペットショップや金魚店などでキンギョモやカナダモなどの水草を買ってきて、うき上がらないように底の小石や砂の間にさす。水草に根がなくても、しだいに根が出て、水の中の栄養を吸収して成長していく。また、水草からは酸素が出て、キンギョの呼吸を助ける。


キンギョモ
キンギョモ

●最初にすること
キンギョを買ってきたら、すぐに水そうに入れたくなるが、まずビニールぶくろのまま水そうに15分ほどつけておく。こうするとキンギョはしだいに水そうの水温に慣れるからだ。その後で水ごと水そうに入れる。



●えさの種類
キンギョ用配合飼料、イトミミズ、アカムシ、乾燥(かんそう)ミジンコ、水草、コケなど。


キンギョ用配合飼料
キンギョ用配合飼料
キンギョ用配合飼料
キンギョ用配合飼料
イトミミズ
イトミミズ

冷凍アカムシ
冷凍アカムシ
乾燥アカムシ
乾燥アカムシ

●えさを与える量と回数
春から秋にかけての、キンギョが活発に動く時期には1日に1回から2回あたえる。えさが多すぎると食べ残しが出て、水質が悪くなるので少なめにし、よく観察して食べきる量をあたえる。水温が低い屋外などで飼う場合には、冬の間はえさをあたえる必要はない。暖ぼうのよくきいた場所に水そうがある場合は1日か2日に1回、えさをあたえる。



●水かえ
春や秋には数日おきに水かえ用ポンプで、底にたまったふんを吸い取る。また2週間に1回ほど、2分の1ほど底の方から水をポンプで出し、くみおきした水かハイポ(チオ硫酸(りゅうさん)ナトリウム)で塩素を取りのぞいた水を追加する。真夏の暑い時期には1週間に1回ほど水かえをする。



ハイポ
ハイポ
水かえ用ポンプ
水かえ用ポンプ


●水のつくりかた

かえる量の水を日なたなどに1日出しておくと、消毒に使われる水道の中の塩素がなくなる。またペットショップで売っているハイポを水道水に入れればすぐに使うことができる。

●冬の世話
できるだけ1日の温度差の少ない場所に水そうを置いておく。水温が低く、キンギョがじっとしているときには水かえの必要はない。


●産卵のための環境づくり
きれいにそうじした水そうの水面に水草をうかべる。

●オスとメスの割合
メス1匹にオスを2〜3匹を入れる。

●卵を守る
産卵用の水そうから親を出してしまい、水の量を少なめにする。産卵の翌日によく日の当たる場所に出してやると、1週間ほどでふ化する。その間、卵をよく観察し、白くなった卵は死んでいるのでピンセットで取りのぞく。

●稚魚のえさ
ふ化してから2〜3日で稚魚(ちぎょ)が動きまわる。動き始めたら稚魚用の配合飼料か乾燥ミジンコを細かくしてあたえる。



●体のつくりと働き
キンギョはもっとも身近な魚類である。キンギョの体のつくりをよく観察してみよう。背びれ、胸びれ、腹びれ、しりびれ、尾びれの動かしかたやそれによってどのように泳ぐのかを観察してみるのもおもしろい。ビデオにとって、スロー再生で見ると、動きがよくわかる。

●背びれのない品種
ランチュウなどの品種には背びれがない。ほかの品種と比較してもよい。

●えさの食べかた
キンギョがえさを食べるときには、歯でかじるのではなく、水といっしょにえさを吸いこむ。そのときのえらぶたの動きを観察してみよう。



●デメキンとふつうの眼の金魚のこどもはどうなるか
親の特徴(とくちょう)がこどもに伝わることを遺伝(いでん)という。ふつうはオスとメスの両方の特徴を受けつぐが、その特徴がこどもにすべて現れるということはない。たとえばデメキンとふつうの眼のキンギョをかけあわせる(飼育下で繁殖(はんしょく)させること)と、こどもは全部ふつうの眼のものになる。ところがそのこどもどうしをかけあわせると、こんどはそのこども(最初のデメキンとふつうの眼の金魚のまごにあたる)のうちの一部にデメキンが現れる。このことから、デメキンとふつうの眼のキンギョのこどもにはデメキンは現れなかったが、遺伝のための特徴がちゃんと伝わっていたことがわかる。


デメキンとふつうの眼の金魚のこどもの遺伝図