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Top > 特集記事 > 社会 > 2013.3.4
徹底討論 町田徹×小野展克 JALは本当に再生したのか?
稲盛和夫という男をどう評価するのが正しいのか
■パイロットの高給を下げた ■ムダを見抜く能力は抜群
■政治家の使い方を知っている ■ここまでやると、まるで宗教
民主党政権のたっての要請で、巨大組織JALを叩き直した老練な経営者。齢81にして見事に任を果たしたと、いま日本中が喝采を送るが―。二人のジャーナリストが、その実像と本性を語り尽くす。

パイロットの高給を下げた
町田 稲盛さんがJALの経営に携わり、2月で3年が経ちました。ただ、マスコミは「JAL再生を成し遂げた」と稲盛さんの手腕を称えていますが、今までの回復は決して彼一人の力ではないと思います。会長就任前から再建のレールは敷かれていたし、そのレールがなければ、稲盛さんとて成功できたとは思えない。

 もともとJALでは、前の自民党政権時代から米国系コンサルティング会社の下で、人件費5割カットなど大ナタのリストラ策が始まっていました。民主党政権下では、旧産業再生機構の冨山和彦さんらが大幅な債権カットを銀行に認めてもらい、会社更生法適用のための種火となる公的資金を6000億円も用意した。

小野 しかも、その巨額の公的資金は、ANAなど他社との公正な競争環境を大きく歪めてしまいました。稲盛さんの成功物語が取り上げられる一方で、こうした不公平が隠れてしまっていますよね。

町田 もちろん大変な仕事を成したのですから、評価されて然るべきですし、「稲盛さんは大したことない」と言うつもりも全くありません。しかし、全て稲盛さんの手柄だという風潮は行きすぎだと思うんです。

小野 JALの昨年3月期決算では、1866億円というものすごい純利益が出ていますが、実は会社更生法の恩恵も大きい。財産評定に金利、銀行からの借金棒引きがあり、さらに法人税も納めていませんから、トータルで1000億円くらい下駄を履いている。

 平均約1900万円だったパイロットの高給も、1200万円まで落としました。これも会社更生法がなければ、なかなかできなかったと思います。そういう背景があっての高収益なんですね。「奇跡の再生」と称賛されるけれど、正直、奇跡でも何でもない。

町田 ただ、公平を期して言えば、JALはすごくまともな会社になったなと思うんですよ。

 僕はJALが破綻する3年前から「JALは実質的に破綻している」と何度も書いてきました。破綻前のJALって、とんでもない会社だった。ちゃんとした予算計画がないばかりか、簡単に達成できる目標ばかり立てて、期末に「目標を大幅に上回った」と喧伝することが優秀な社員の基準になっていた。巨額の借金を帳簿の外に出して隠していたうえに、飛行機を買ったときの割引まで利益として計上していたんです。モノを買って利益が出るなんてありえないでしょう。

 しかし破綻後のJALは、帳簿外に隠していた費用もきちんと帳簿に取り込んだうえで、過去最高の2000億円以上の営業利益を出しています。JALの実態は見かけ以上に良くなっているとも言えるのです。

小野 昔のJALはそれこそどんぶり勘定で、路線別の収支すら正確にわからない状態だったのが、稲盛流の「アメーバ経営」を取り入れて、部門別の正確な収支管理ができるようになった。この点では、稲盛さんの貢献は大きかったですね。

町田 「アメーバ経営」の本質は、損益分岐点という経営学で最も大事な考え方を、どんな社員でも無意識に体得できることなんですよね。この仕組み自体は、やっぱり非常に面白い。

 読者の皆さんのために説明しておくと、社員を7〜8人の小さな部門(アメーバ)に分けて収益目標を立てさせ、毎月の売り上げや費用、利益が一目でわかる表を作る。目標金額と1万円でもズレたら、良くなっていようが悪くなっていようが「原因は何だ」と3日間徹底的に議論させ、すぐに修正の手を打たせるんです。

 その7〜8人のアメーバをいくつか束ねた部単位のアメーバでも同じことをやり、さらに本部に部長が集まって本部長の前でやり、最後は各本部長が集まって稲盛さんの前でやる。












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