芸能・時事・政治ネタ。スクープ満載 男のWebマガジン『週刊現代オンライン』
週刊現代オンライン
Top > 特集記事 > 社会 > 2013.4.1
週現スペシャル 大研究 日本でトップ0.01%の「頭脳」 でも彼らは本当に幸せなの?
東大医学部【理III】に合格した人たち
■どこまで難しい? 東大理IIIのテスト ■「鉄門」に入部できる人
■「出身者の2割は発達障害」は本当なのか ■IQが高いアスペルガー
■なぜ東大医学部出身の名医はいないのか ■天皇の手術は手に負えない
東大医学部合格が意味することは、2つある。日本で最も勉強に秀でていること。そして日本一の権力を持つ医局に入る切符を手に入れたことだ。だがそれは決して、幸福への切符では、ない。
第1部 出身校は灘、開成、桜蔭で4割超
どこまで難しい? 東大理IIIのテスト

 偏差値79。東京大学の医学部コース・理科III類は、日本最難関と言われる東大の6つある科類のなかでもダントツの最難関。それは今年の東大入試の合格最低点を比べれば一目瞭然だ。

 理科I類 315.7点

 理科II類 302.7点

 理科III類 370.4点

 理科I類は工学部・理学部コース、理科II類は農学部・薬学部コースである。これを見てわかるように、場合によっては、0.1点刻みの勝負になる東大入試において、理IIIの合格ラインは、理IIより約70点も上にある。理IIIが東大生の中でさえ、住む世界が違う、と言われる所以ゆえんである。理IIIはいわば、日本の大学受験におけるひとつの頂点なのだ。

 東大合格者約3000人のうち、理IIIはたった100人程度。日本の1世代あたりの人口を100万人強として単純計算すれば、同世代の上位0.01%の頭脳を持つ英才たちが理IIIに集結することになる。彼らはいったいどれほどアタマがいいのだろうか。

 開成高校卒の理III現役合格者Aさんは、なんとセンター試験の数学I・AとII・Bをともに、制限時間60分のところを30分で解いたという。しかも両方とも100点満点。超人技のように思えるが、彼は「全然自慢するようなことじゃありません」と言う。

「理IIIの受験者なら僕なんて平均かそれ以下の学力だと思います。高校の同級生に、『センター数学くらいならすべて暗算で解いたほうが早い』とうそぶいている奴がいて、センター試験終了後に問題用紙を見せてもらったら、本当に途中式も何もなく真っ白なので驚きました。消しゴムの跡も一切なく、ただ答えだけが書き込んであった」

 Aさんは本来3年生が受ける東大模試(東大即応オープン)を2年の冬に飛び級して受け、見事B判定(合格圏内)を勝ち取った。

「意外にいけるんだ、と思いました。理IIIを本格的に意識したのはその判定を見てからですね。それまでは理II志望でしたから。

 勉強時間は平均すると一日3時間くらいだと思います。東大合格者の平均は6時間らしいですが、僕は集中があまり長く続くタイプではなかったんです。勉強自体は好きではないですし。

 それに2ちゃんねるが好きで、どんなに受験勉強が忙しくても、最低でも一日2時間は2ちゃんを見る、ということにしていて、センターや二次試験前日も欠かさず見ていました。それがいい精神安定剤になっていたんじゃないかな、と思います」

「趣味」を続ける余裕を持ちながら、軽々と理IIIに合格してしまったAさんは、少なくとも「受験勉強レベル」で見れば十分、天才の部類に入る人である。

 一方で、理III生にもう一つ多いのが、「根っからの勉強好き、競争好き」タイプの人間だ。西の名門、灘高校出身の理III合格者Bさんは、勉強マニアと言っていいほどの勉強好きだった。

「一日の平均勉強時間は8時間くらいだったと思います。1月に入ってからは10時間以上やってました。勉強はやったらやった分点数が伸びるので、面白い。

 ただ自分の中では中学受験のほうがよく勉強したような感覚ですね。小学4年生から希のぞみ学園という塾に通っていて、夜遅くまで勉強していた記憶があります。6年になると、授業が23時頃まであって、帰って風呂に入って、寝るのはいつも24時過ぎでした。

 灘中・高では、鉄緑会という塾に入って膨大な宿題をこなしました。6年間モチベーションを保つのは大変でしたが、高校に上がるときに、『高校から灘に入ってくる40人は学力が高いから、下から上がる奴らの順位は例年がくんと落ちる』という噂が流れてきたときは燃えました。やっぱり同じ面子メンツで競っているよりは、新しい敵が来たほうが刺激になります」

 今年の東大理III合格者は、灘27名、開成8名。これに女子のトップ校・桜蔭高校の4名を加えれば39名に達する。年によってはこの3校だけで4割を超すこともある。開成の卒業生で東大医学部OBの作家・石井大地氏が語る。

「東大理IIIの最大の特徴は、都市圏の中高一貫校出身者が7〜8割程度を占めるということです。他の学部では合格者の母数がもっと多いので、地方の県立トップ高校の学生の割合が高く、ここまで寡占状態になることはありません」

 理III合格者のインタビュー集『天才たちのメッセージ 東大理III』の昨年版で行ったアンケートによれば、理IIIの出身高校割合は「私立」が88.7%と、圧倒的だった。

「こうした学校は、多くが男女別学です。別学の進学校というのは、どこも空気が似ていて、必然的に理IIIにはその別学進学校のムードが持ち込まれます。ですから大多数の理III生にとって理IIIは、そのまま高校の延長線上にあり同じノリで生きられてしまうわけです」(石井氏)

 中高の6年間、そして大学の6年間、あわせて12年間、同じような環境で生きることになる。裏を返せば、地方の公立校などで抜群に勉強ができる高校生でも、彼らと競って理IIIの入学テストを突破するのは、まさに至難の業ということになる。

 ある開成卒の東大医学部生は、研修医として外の病院に出たときにはじめて「世界は灘と開成だけじゃないんだと悟った」という。つまり、理IIIおよび東大医学部とは、それほどに同質的で、閉鎖的な世界なのである。

 では東大医学部生のキャンパスライフとはどのようなものなのだろうか。

 まず、理III生の多くは、意外にも講義にはあまり出ないという。

「理IIIに入って驚いたのは、講義に出席しなくても許されることですね。試験さえ通れば単位はとれるので、ほとんど学校に行かなくていい。みんな講義にはあまり出ていませんでしたよ。私の場合、解剖実習は出席点があったのでさすがに出ましたが、3年に上がってからの4年間で、講義は3回しか受けていません」(東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏)

 講義に出ないからと言って、それくらいでついていけなくなるレベルの学生は理IIIにはいない。彼らは要領よく単位を稼ぎ、その空いた時間をバイトに充て、金銭も効率的に稼ぐ。和田氏が続ける。

「理III生というだけで、家庭教師の時給が抜群にいいんです。8000円や1万円はザラ。1泊2日で20万もらったという友人もいました」











この続きは会員になるとご覧いただけます。
面白コラム満載!会員登録をすると「連載・コラム」はご覧いただけます
TOPページへ

「週刊現代オンライン」は、『週刊現代』より厳選した記事を掲載しております。
会員になると、コンテンツ一覧にある記事をすべてご覧いいただけるほか、過去のバックナンバーもご覧頂けます。

本ホームページに掲載の文章・画像・写真などを無断で複製することは法律で禁じられています。
すべての著作権は株式会社講談社に帰属します。週刊現代・週刊現代Onlineに関するご意見、ご感想は [email protected]
iPad/スマートフォンから閲覧された場合、一部の画像が正しく表示されないことがございますが、掲載記事はすべて閲覧することができます。