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さてそのような苦闘の末に出たマラソン大会であるが、わたしは、
「ああ、馬鹿だった」
と思うことになる。というのも、湘南の海岸を走るという、ちょっと聞くと最高のロケーションに思えたマラソン大会だったが、右が防風林、左手が砂浜という光景が延々と、果てしなく続くんである。景色の変化楽しみながら頑張るとか、そういうのは全然なし。むしろスポーツクラブのジョギングマシンでテレビを見て走っていたほうが刺激があっていいというのがわたしの感想である。
ここで東京マラソンに話がつながるんだけど、
「新宿の都庁から渋谷、銀座、浅草と巡って最後にウォーターフロントを走り抜けるあの人たちは、きっと楽しい」
と、しみじみ思った。だれが考えついたのかわからないけど、東京の都心でマラソンという、ちょっと聞いただけでは無謀なこの計画には、夢がある。なんでも参加費は1万円と聞いた。破格の値段だけど(走るのに熱中していたころに読んでた『ランナーズ』という雑誌で見ていた各地のマラソン大会の参加費は、2000円ぐらいから、せいぜい3000円とか4000円ぐらいだったと思う)、東京を走破するというのは大変に刺激的だ。観客が多いのも、速い人なんかには、たまらない何かがあるだろう。わたしも初マラソンに挑むなら東京マラソンだな、と思ってしまったほどである。ホノルルはもう古いね、である。わたしの場合だとハーフマラソンでも耐えられるかという難問があるが、とにかく東京マラソンに出た人たちがうらやましかったのは事実である。
さて迎えた東京マラソン。わたしは湾岸のほうが住まいなので、「東京マラソン ××商店街」と、地元の商店街が配った旗を手に、沿道の応援に参加した。小雨ぱらつくなか、傘を差しながら待っていると、先頭の選手がやってきた。アフリカのほうの出身の黒人の選手だったんだけど、やってきたな、と思ったらもう通り過ぎていた。「頑張れ」の「が」と言ってるあいだに消えていた。42.195キロを2時間ちょっとで走るということは時速20キロ前後。わたしは例のママチャリにまだ速度計をつけっぱなしにしていたのだが、時速20キロは下り坂でしか達成したことがない。世界トップクラスのマラソン選手の人体というのは本当にどうなっているんだろう。バネでも入ってんじゃないのかというのが感想である。
また、今回の東京マラソンでは、車椅子で参加している人もけっこう見かけたのが印象的だった。彼らの走りに感動して
「わたしももし足に障害をもったとしたら、こういうスポーツに励もう。ポジティブに物事を考えて」
と、こちらも胸を熱くしていたのだが、そのうちわたしは考えさせられてしまった。わたしが応援していた地点からちょっと行ったところに橋があって、普段はどうということもない傾斜なんだけど、よく見ると険しいんである。腕の力だけで坂を越えようとする車椅子の選手の両手がぶるぶると痙攣するように震え、橋の途中でまったく前に進めなくなるの見たのだ。障害のある人たちがこういうスポーツに参加するのは、アミューズメントのためだけではないかもしれないと気づいた。障害をもつ人に優しくない環境のなかで、自力で何でもできることを目標にして、競技としてのマラソンに参加するということもあるんじゃないだろうか。本当のバリアフリーって、まだまだはるか遠いところにあるのだな、と考えさせられてしまった。
ともあれ、42.195キロを走りぬいたすべての皆様、本当にお疲れ様でした。来年も同じ大会があったらまた応援に行きますので、ふるってご参加を。東京都民のひとりとしてお待ちしております。ではでは。
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