
ジオマンティック・リーディングとは、中近東に起源を持つ、きわめてシンプルでありながら長い歴史をもつ「神託術」のひとつです。ジオマンティック・リーディング、これはまたの名をジオマンシー(土占術)とも呼びますが、これは、のちに占星術とも結びついて、アラブ社会と中世ヨーロッパで大きな発展を遂げます。そして、ルネサンス時代には貴族や知識人の間でも、盛んに用いられました。当時は、占星術や手相術と並ぶ、メジャーで信頼の厚い占いだったのです。ルネサンスの魔術思想を集大成したアグリッパが記した『オカルト哲学』や、かの有名な古典『千夜一夜物語』にも、ジオマンシーは登場します。また、同一の起源の神託術は、アフリカでヨルバ族などが今なお実践しています。
ジオマンシーとは、GEO(土)とMANCY(占い)が結びついた言葉であり、本来は地面の上に棒などで印を無作為につけ、その数に複雑な操作を加えて占うという方法がとられていました。ほかにも、取り上げたジャガイモの芽の数、あるいは子安貝を投げて占うという方法もあります。いずれにしても、偶然に表れた数のなかに予兆を見るもので、西洋版の易といってもいいでしょう。ジオマンシーは西洋ではほとんど実践されなくなっていますが、ここでは、アグリッパやフランツ・ハルトマン、アレイスター・クロウリーなど古今の魔術師たちの文献を紐解くことによって、その体系を現代化することに成功しました。砂に埋もれた、幻の占術が今ここによみがえります。
鏡リュウジ
*注1:フランツ・ハルトマン1838-1912
ドイツの神智学者。アメリカに渡り、医師としても活躍。神智学、魔術、オカルト全般に関して多数の著作を残す。
*注2:アレイスター・クロウリー1875-1947
英国の神秘家。ヨガと西洋魔術を融合させるなど、さまざまな魔術研究を行う。著書に『法の書』など多数。
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