大研究 日本一の金持ち 推定総資産7000億円はどうなるのか
心配になる「ユニクロ・柳井家」の相続
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■年間30億円を納税? |
■お支払いは現金で |
■もし財団法人を作ったら |
■そして日本を去る日 |
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日本は富裕層「重税」大国だから、金持ちは生き辛い。そこへきて安倍政権が追い討ちをかけるように、金持ち増税を決定した。いったい何が起きるのか。日本一の金持ちを例にとって考えてみよう。 |
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年間30億円を納税?
いま日本の名だたる富豪たちが、ひっそりと海外脱出を始めている。
「たとえば大手情報サービス会社のA会長はニュージーランドへ、大手電子機器メーカーのB社長はシンガポールへすでに移り住んでいるといわれている。大手小売業者のC社長や大手音楽関連会社のD社長が海外へ移ったとの噂も絶えません」(富裕層専門の資産コンサルタント)
彼らのほとんどは創業者として会社を立ち上げ、上場させた株で莫大な資産を築いた人たちである。
「彼らは自分の持ち株分だけで何百億円とか何千億円の資産価値になってしまうから、配当収入に対してだけで何億円もの所得税を支払わなければならない。相続税となれば百億円単位になるのもザラ。それらを嫌気して、税金が安い海外への“脱出ラッシュ”が始まっているのです」(同前)
そんな事情を知ってか知らずか、昨年末に誕生した安倍晋三政権はこのほど大規模な富裕層増税を決定した。所得税と相続税の最高税率をそれぞれ「40%→45%」「50%→55%」にアップさせるというものだが、いま税務関係者の間では、この“税制版アベノミクス”が日本を「フランス化」させると危惧されている。
「フランスでは昨年5月に誕生したオランド政権が富裕層増税を打ち出すと、高級ブランドを多数抱えるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの最高経営責任者(CEO)であるベルナール・アルノー氏がベルギー国籍を申請、同じく著名俳優で富豪でもあるジェラール・ドパルデュー氏がロシアの市民権を取得するなど、成功者たちの国外脱出が止まりません」(富裕層事情に詳しい公認会計士)
たとえばスウェーデンのように、世界の先進各国では相続税などをゼロにすることで能力のある富裕層たちを集め、国力を高めるという租税戦略が主流。この逆をいく日本が「フランス化」するのは目に見えているというわけだ。
そうした中、富裕層を専門にする業者の間で「次に日本を離れる富豪は誰か」との予想がさまざま語られている。中でもその動向が最も注目されているのが柳井正氏(64歳)である。
山口県の一小売業者にすぎなかった会社を父親から引き継ぐと、たった15年で東証一部に上場。その後もフリースやヒートテック、ウルトラライトダウンといったヒット商品を次々とヒットさせ、「ユニクロ」を世界的ブランドにまで急成長させた、あのファーストリテイリング(以下、FR)会長兼社長の柳井氏だ。
柳井氏は米経済誌のフォーブスが選ぶ世界の富豪ランキングで日本一に選ばれているように、文字通り「日本一の富豪」である。さらに柳井氏が「次の海外移住者になるのでは」と注目されている理由は、氏が日本トップクラスの納税者でもあるからだ。
たとえば、所得税ひとつをとってもケタが違う。
右の表を見ていただきたい。これは柳井氏がここ10年でいくらの配当収入を得ていたかを試算したものだが、莫大な額を得ていることがわかる。ちなみに柳井氏が毎年会社から受け取っている役員報酬は、「2012年=3億5500万円」「2011年=1億5000万円」「2010年=3億円」だから、収入の大半が配当収入だといえる。そしてこの配当収入に、信じられないような額の所得税がかかっているのである。
「配当収入に対してかけられるのは『所得税+住民税』で、柳井氏の場合は発行済株式総数の3%以上を保有しているので、最高税率である50%が適用されます。つまり、年間配当収入が60億円だとすれば、配当控除5%を考慮して、ざっくり言って一年で27億円の税金を取られていることなります」(グラントソントン太陽ASG税理士法人代表社員の浜村浩幸氏)
ここ10年での推定配当収入は約415億6000万円なので、10年でその半分近い187億円(!)を納税した計算だ。
「さらに、今回の自民党の税制改正後からは、所得税の増税により最高税率が55%になるので、年間配当収入が60億円なら、配当控除を考慮した納税額は30億円と3億円もアップすることになります」(同前)
3億円といえば、前述したように柳井氏が会社から受け取っている役員報酬額とほぼ同じ……。それを丸ごと税金として取られるというのだから、いかに柳井氏が重税を課せられているかがよくわかる。
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