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Top > 特集記事 > 社会 > 2013.4.30
GW合併号特別企画 天才と呼ばれた子どもたちは、大人になって幸せになったのだろうか
開成、灘、筑駒 卒業30年後の「神童」たち
■学校名が生きるのに邪魔だった 社会に出てつくづく感じた受験秀才の「限界」 ■「小粒」な人ばかり
■選挙には勝てない ■いつもどこかで競ってしまう テストの点数だけで人間を判断する「悲しい性」
■人を喜ばすことができない ■人生いろいろ、秀才もいろいろ
■肉体労働の日々 ■皇太子と友だち
「小学校時代は神童と呼ばれました」。3校の卒業生は必ずそう言う。少しズレた感覚で青春を送った彼らも、大人になり、50歳を前にして思う。俺はいつから「特別な人間」じゃなくなったのか――。
第1部
学校名が生きるのに邪魔だった 社会に出てつくづく感じた受験秀才の「限界」

「自分は特別なんだ、ずっとそう思って生きてきました。でも自分の会社人生の先が見えてきて、気づいたことがあります。ひょっとしたら、灘高卒という学歴は俺にとって邪魔だったのかもしれない、って」

 そう語るのは、メーカー勤務のAさんだ。小学校時代はもちろん「神童」で、東大法学部から大手メーカーに就職。自分では同期の誰よりも優秀だと思ってきたが、50歳を前にして、役員になれないことがハッキリとわかった。

「中学生の時代から、親であれ親戚であれ、同級生であれ、『周囲に尊重されている』という安心感に包まれて生きてきた。しかし、会社組織はもちろん、自分が築いた家庭においても、無条件に尊重されることはありえないんですね。家では妻に役立たずと言われ子どもに無視され、会社も私を役員には選ばなかった。

 灘高卒でなければ、もっと謙虚に生きられたかもしれない。そう思うことはあります。それでもなお、私にとって『灘高を出た』という事実は大切です。理屈ではなく、心と身体に染みついた、大切なアイデンティティなんです」

 開成高校、灘高校、筑波大附属駒場高校は、名実ともに日本でトップ3の進学校である。東大合格者はこの3校だけで毎年350人以上、多い年は400人に迫る。実に東大新入生(約3000人)の8分の1以上をわずか3校で占めていることになる。

 だがもちろん、かつての神童たちが全員、大人になっても「特別」でいつづけられるわけはない。冒頭のAさんも、そのことに気づいた一人だった。

 3校の中でも「自由な校風」で知られる灘は、卒業生が個性的な活躍をしていると思われがちだ。でも実際にそうなのか。

「灘には優秀な人間が多くいたことは認めますし、私も同級生たちから大きな刺激を受けました。ですが『本当に才能溢れる人間』は、灘のような学校に入って来ないんじゃないかと、社会に出てから思うようになりました」

 そう語るのは、朝日新聞記者で「耕論」などのオピニオン記事を担当することが多い太田啓之ひろゆき氏だ。太田氏も灘高を卒業して今年でちょうど30年になる。

「小学校6年生時点で、ものすごく勉強ができる子どもたちが集められたわけですが、では50歳を目前にした今、社会の中で人が驚くような仕事をしている人間がたくさんいるかというと、そうではない。別に意外でもなんでもなく、『そんなもんやろ』と思います。

 私はインタビュアーとしていろいろな人に会いますが、たとえば『新世紀エヴァンゲリオン』をつくった庵野秀明さんのように、本当に才能のある人は型にはまらない。では庵野さんが灘に入れるかというと、無理なわけです。中島らもさん(灘高OB)にしても、才能が溢れる人はやっぱり灘には馴染めない。

 灘にせよ開成にせよ、ああいう学校は『周囲に合わせて自分の欲求を修正できる人間』を入試で選別している。いい学校に入ってほしいという親の欲求に敏感な子どもだから入れるわけで、『神童』ではなく『秀才』なんだと思います。マグマのような内発的な衝動を持っている人間が入れる学校ではないんですね」














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