子育て優先、ニューヨーク永住へ
残念だけど、松井秀喜は日本に帰ってこない
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■わだかまりは解けたのか |
■NYは大人の街だから |
■「監督に興味はない」 |
■ヤンキースに残してきた夢 |
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背番号にちなんだ5月5日に、師匠とW国民栄誉賞&引退セレモニー。この違和感、本人が感じないはずがないのである。流れのままに巨人復帰とは行かず、主賓はNYへ逆戻り。「次期監督」の胸中に迫った。 |
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わだかまりは解けたのか
「ナベツネさん(渡邉恒雄・巨人軍球団会長)が健在の間は、松井が巨人に戻ることはないだろう、というのがわれわれスポーツマスコミの間では定説でした。FAでヤンキースへ移籍する際、『出て行くのは勝手だが、帰る場所があると思うな』と“口撃”されたことを受け、『読売とは今後一切、関わりを持たない』と、松井はナベツネさんへのわだかまりをなかば公然と口にしていましたからね」(スポーツライター・藤本大和氏)
その「定説」は件くだんのWセレモニーによって、ひっくり返ったのか。内閣総理大臣を東京ドームに呼びつけるなど、礼儀を重んじる松井秀喜(38歳)にとって最も嫌う形。それでも彼は帰国し、ジャイアンツのユニフォームに袖を通した。
「あの日を境にスポーツ紙の見方は『松井は巨人復帰を承諾したのではないか』に変わりました」と藤本氏は言う。
「実際、来季の取材態勢について話し合いを持った社があります。松井担当記者を増員しようというわけです。松井の元専属広報がこの4月に巨人の球団代表付アドバイザーに就任したのも、『松井の巨人復帰の布石に違いない』と囁かれています。ならばと球団のベテランスタッフと話してみれば、『松井は来年、必ず帰ってくるよ』なんて力強い答えが返ってくる。少なくとも風向きは変わってます。今オフ、指導者として巨人に復帰する可能性は高い。復帰要請されることは間違いないでしょう。仁志敏久みたいに、『松井が監督をやるなら、コーチをやってもいい』と早くも名乗りをあげている熱血漢もいるそうですよ」
〈今オフにも臨時コーチ就任か〉〈入閣の決意〉〈8月に入閣の本格交渉へ〉
実際、スポーツ紙には巨人ファンなら胸が高鳴るような文字が躍っている。
だが、本当にそうなのか。
不思議なことに、松井に近い人物に聞けば聞くほど、否定的な声が集まるのだった。たとえば、セレモニー当日に渡邉会長が監督就任を打診したという松井の父親・昌雄氏はこう本誌に語っている。
「結婚して子供を授かって、家族生活、そして子育てと、引退後のすべてが初めて経験することだと思うんです。それらは秀喜の人間力に関わること。巨人という素晴らしい球団から(次期監督にという)ありがたい言葉をいただいたうえで、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、監督になるのはもう少し後でいいのではないかとも思うのです。その前に、本人がやり残したと感じることに精進してほしい」
松井は「英語をもっとちゃんと勉強したい」という希望も父に伝えていた。そしてマイケル・ブルームバーグ市長と二人で食事に行くほど、彼はニューヨークという街に受け入れられているのだという。昌雄氏が続ける。
「私の想像以上に現地で人間関係の幅が広がっているようです。親としてこんなに嬉しいことはありません。ニューヨークに残って、大学でやりたい勉強に打ち込むことも選択肢のひとつとして、本人の中にはあるのではないでしょうか。そしてそれは将来的に、巨人に恩返しをすることになった場合にも生きてくると思うのです」
プライベートでも親しいスポーツジャーナリストが話を引き取る。
「私もいつかは巨人の監督をやってくれる、と思っています。ただ、それは今じゃない。3月に長男が生まれたばかりで、まだ首も据わっていません。春季キャンプが始まる頃になってもまだ1歳になるかならないか。そんな中、単身赴任で巨人入りするとは到底思えない。ならば妻子と一緒に帰国するかと言えば、それもありえないですね。なぜなら、超人気者ゆえ、彼には日本ではプライバシーがまったくないからです」
球界のスーパースターは一般人である妻との結婚に際し、「何があってもプライベートは守り抜く」と約束した。実際、MVPに輝いたワールドシリーズの優勝パレードにも、今回のWセレモニーにも、夫人は姿を見せていない。
ただその約束は、松井家の拠点がニューヨークにあったからこそ、可能だった。
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