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日本のプロ野球人気の低迷が叫ばれて久しい。野茂、佐々木、イチローといった日本人大リーガーの活躍によって、選手だけでなく、ファンのメジャー流出が進んだためだという。ならば、今シーズンに実現した松井秀喜のヤンキース移籍は、日本球界にとって致命的な事件といわなければなるまい。
しかし、はたして本当にそうなのか。仮に松井が日本にとどまったとしても、プロ野球の凋落に歯止めをかけられるかは疑わしい。日本球界を取り巻く状況は、もはや一人のスターの選択や一球団の経営努力によって好転するほど、楽観的な状況にはないからだ。
マスコミからはメジャー賛歌ばかり聞こえてくるが、そもそも野球人気の低下は日本だけの現象ではなく、アメリカにおいても深刻なのだという。選手の年俸をめぐるトラブルやフットボール人気の上昇といった要因から、大リーグが米国内での“No.1スポーツ”の座から転落している事実は、日本ではあまり知られていない。運動能力の高い選手が他のスポーツに流れるため、全体のレベルも低下しているようだ。オリオールズやヤンキースなどでプレーし、日本球界でも活躍した日系人レン・サカタ氏は「もしイチローが15年前に来ていたら、間違いなくマイナーからのスタートだった。当時は彼くらいの選手はたくさんいたからね」と指摘している。
オリンピックの競技数削減対象に野球が含まれたことからもわかるように、つまるところ、世界のスポーツ界において、野球そのものが危機に瀕していると認識すべきではないだろうか。日本球界の窮状もそうした大きな流れと連動しているのであり、そうであれば、一部のスター選手を囲い込もうというような、保護主義的な発想では道は到底開かれない。
では、どうすればいいのか。これはもう、本道に戻るしかない。つまり、野球というスポーツ文化の素晴らしさを、球界のあらゆるレベルで、あらゆる機会を通じて内外にアピールしていくのだ。アテネ五輪でのドリームチーム結成も、日本が勝つためだけでなく、前述の目的のためにより重要な意味を持つ。
また、国内に目を向ければ、プロアマ交流の加速が焦眉の急であることは論をまたない。現役のプロ選手やプロ経験者との交流が活発になれば、アマチュアの意欲や技術が向上し、そこから輩出されるプロのレベルも高まるのは自明の理。子供たちの関心も戻り、野球人口の裾野は確実に広がるだろう。
ところが、である。先日、社会人野球シダックスの監督に就任した前阪神監督の野村克也氏が、注目の初采配を振るう予定だった帝京大との練習試合で、ベンチ入りできないという事件が起きた。野村氏がテレビCMに出演していることを、大学野球連盟が問題視、「芸能人との試合」を禁じる学生野球憲章に触れると言い出したのだ。こんな石頭がいては、真のプロアマ交流など夢のまた夢。ノムさんはぼやくことしきりだった。
改革とはこういう人間を放逐することから始まるのだ。
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