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てなことを論点の渡辺編集長に熱く語ったところ、どこから説明したらいいのかという顔でこう言われた。
「おまえが東北の田舎育ちなのはよーくわかった。たしかにな、この問題というのは各論としては問題が出てくる。そういう田舎の郵便局とかが無くなったら困る人たちも多少はいるのだろう」
多少じゃねーですよ。かなり潜んでいると思いますよ。過疎の山々に点々と。
「でもな、聞け。総論としてはこの民営化は正しいのだ」
じゃあどこの金融機関がこの肩代わりをしてくれんですか。JRだってどんどん廃線になったじゃないですか。忘れませんよ。
「わかった、おまえが田舎で育ったのはよくわかった。でもいいから聞け。まずな、郵便局というのは、みっつある。仕事がみっつある。郵便局というのは、普通郵便局（ポストから葉書や手紙を集めて仕分けをし、配達する集配業務と、郵便貯金、簡易保険を扱う大きな郵便局）、これが1300個ぐらい。特定郵便局（大部分は集配をしてない小さな郵便局）、これが2万個近くある。あと、簡易郵便局（地元の農協などに業務委託して、自分ではなにもしていない）、これが4500個ぐらい。全部で2万5000個。そこに職員がいっぱいいる。全部でけっこういっぱいいる。全部公務員。な？ 公務員だから、努力しようがしまいが給料は変らない」
知ってますよ。だから郵便局員はエリート職なんです。親とかが言い聞かせるんですよ、「おおきくなったらこうむいんになれ」って。だから将来の夢の欄には、みんな訳もわからず「ちほうこうむいん」って記入すんです。小学校のうちから。「こっかこうむいん」って書いたのは裁判官の娘だけでした。
「でもな、民間だったらひとりですむ仕事を、ふたりでやってたりするんだよ。法人税も払わないでいいし。郵便局が問題なのは、その郵便局があることで、民業を圧迫する。なんで圧迫するかというと、ある一定以上は郵便局の仕事を取ることはできないよう、法律で定められているからだ。“信書”、つまり手紙とかハガキだ。それからクレジットカードとか、内容証明郵便とかは、郵便局しか送れないことになっている。郵便局じゃないところが参入しようとしても、参入できない。郵便業務は郵便局がほとんど握っている。民業を圧迫する」
いいじゃないですか。多少ぐらい民業を圧迫したって。民業だと置いてけぼりになりそうな熊のでる田舎を郵便局が支えてるんですよ。マタギと郵便局は国の財産です！ 失ったら二度と取り戻せないのはわかってんですよ。ヤマト運輸や黒ネコ宅急便がそんなに大事ですかっ。
「じゃあこっちの話をしよう。郵便貯金の額、知ってるか？」
知ってますよ、ひとり1000万まで！ ほら、わたしも少しは世間に詳しいでしょ。
「そうじゃなくて、郵便貯金の総額だよ……。どうせ知らないと思うからいうけど、230兆な、全国で。それから保険、簡保。簡易保険。これが120兆ぐらい。あわせると350兆。これがどのくらいの大きさの資金かわかるか？」
いきなりそんなデカい話をされてもわかんねーですよ。うーん、昔「一兆円減税」というので騒いでたことがありましたから、それが350回できる額？ と自分で言ってもピンとこないけど。あいかわらず嫌なところをついてくる人だなあ。性格悪いよ、絶対。
「東京三菱とみずほをあわせてようやく230兆円ぐらいになる。世界一といわれていた、みずほ銀行。それと東京三菱をあわせても郵便貯金が多い。そうすると、銀行などは、なにをやっても郵便貯金にとられちゃうから、なにをやっても駄目なんだ。だから、郵便貯金が民営化すれば、お金はほかに流れるだろう。それから簡保についていえば、120兆。全生命会社をあわせても駄目。というぐらいに、巨大化している」
そうだったんですか。思いのほか巨大な銀行でもあったんですね、あなどりがたし、郵便貯金。国の後ろ盾があるってのはデカいなあ。でもいいじゃないですか、田舎のじーちゃんばーちゃんが歩いて行けるところにある金融機関なんだから。
「わかった、でもな、これらを民営化することによって、自由競争にしようじゃないか。そうすると経済も活性化すると。国が資本を出して、国が管理していたら、いつまでたってもそこばかりが大きくなって、民間が参入できない。民営化することによって、市場は活性化すると。それが小泉が言い続けていたことな。でも実はそれはたんなる建前で、もうひとつ大きな目的があるのだ。なんだと思う？」
うーん、なんか話がデカくなってきた。ちょっと疲れたので、はばかりに行ってもよろしいでしょうか。
「じゃあ次週、もう一度勉強だ！ ここからが大事な問題なんだよっ」
えー、そんなに大事な問題なのーと首をひねりながら、来週はもう一回、郵政事業民営化について。ここからが、どうやら本番らしいです。
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