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「そう、問題はそれだけじゃない。まずひとつは、郵便局で働いている27万人の人たちはタイヘンだ。明日から公務員じゃなくなったら。だから郵政関係の族議員が反対している。なぜなら郵便局は族議員の票田だから。これは民主党も同じ。これから投票しねえぞと脅しをかけられる。現実に、自由化したからといって、公務員として郵便と保険と郵貯の仕事しかやったことがないわけだから。政府の信用という後ろ盾がなくなったら、民間との競争はけっこうきついぞう」
でしょうな。わたしも、郵便局の人たちが現行の仕事以上のことができるとは思えない。この人たち、基本的に共産主義のなかにいたようなもんだから、そもそも商売ってこと自体ができないでしょ。
わたしは貧乏時代が長かったんでフリマに出展しては小銭を稼いで生活費に充てていたんですがね、自慢ですが会場費をさっぴかれても、ただの一度も赤字になったことはねーですよ。ゴミでしかないものをディスプレイで誤魔化し、ゴミでないかのように見せて売ってたんです。塩辛の瓶を5つ「たち吉」の箱に詰めて売りに出したり。売れましたよ、エエ。おばちゃん「たち吉」の箱で興奮、お買い上げ。どうですか編集長、この腕前は。
「それは商売っていうより、詐欺だろ!」
なあに、売っちまったもん勝ちですよ。わたしは一言も「箱の中身まで“たち吉”です」とは言わなかったんだから。勝手に誤解するおばちゃんが悪い。
「おまえ、ホント、心のなか真っ黒だな。東大に入れるような頭さえあれば、族議員になれたかもな」
そうなんですよ、本当に惜しいことをしました。どうしてわたしは省庁に入って天下りとか族議員とか、日本の社会の美味しいとこ取りができなかったんでしょうか。人生でいっぺんでいいんです、天下りってもんを味わってみたかったですよ。
「本当に真っ黒だな。お前が馬鹿なのは、国にとって良かったかもしれないな。俺が一生懸命、郵政事業民営化の問題を大局的な視点から説明してやったから、おまえもようやく気持ちが傾いてきたようだが。おまえがそれこそ族議員だった日には、鬼の形相で揺さぶりをかけたろうな、首相に」
ええ、自分さえ美味しければどうでもいいんです、正義がなんだ。たとえ族議員とか郵政省のOBでなかったとしても、わたしはあの特許庁のおっちゃんのように、郵政省のキャリアから、毎日マッカランの12年ものをプレゼントされたら、郵政事業民営化に反対する立場を取るでしょうね。そもそも田舎の人間が困るって問題があるし。
「いっぺん死んでいいぞ。おまえみたいのがいるから郵政民営化が進まないんだよ。なのでな、民営化ということでなんでもできるようにするから、もうけるようにしろ、ということになったわけだが、たとえばチケットぴあのチケット販売だとか、介護サービスだとか、コンビニみたいな雑貨売りとか、カラオケだとかを事業としてやってもよくなるという基本方針が打ち出された。これが来年6月ごろに可決しそう」
ちょっと待った。なんですか、その民営化のやり方は。田舎者なんで基本的には民営化に反対だし、でも入り口出口論を聞けば、たしかに大局的には正しい理屈だとは思いますが、話が変な方向に流れていませんか。だってそんなことをしたら、それこそが“民業を圧迫”してしまうではないですか! さらに利権が拡大してるとしか思えないんですが。
コンビニだって過当競争でどんどん潰れてるっていうのに、チケットや雑貨の販売、果てはカラオケにいたるまで郵便局の事業になったら、田舎じゃ首をくくるヤツは沢山でると思いますよ。全然シャレになってないですよ。目的は郵便と郵貯と簡保の三つの事業の独占をやめようということだったはずなのに、なんでそんなことになるんです。
「そう、怖いことに、気がついたらそういう流れになっていた。しかも郵貯と簡保が完全に民営化になって、株が市場で売買されるのは2017年。方向としては決まっているのだが、これでは民営化ではないとみんなが怒っている。なぜなら郵便貯金と簡保が2017年まで残る。しかもそれまで政府が株の3分の1を持つということになったら、後ろ盾はなくならないから、結局、郵貯がさらに大きくなるばかりで、民間の銀行は潰れるところもでてくる」
ななな、なにぃ。その話、聞き捨てならんです!
最近ですね、おらっちの叔父の会社がついに吸収合併になったですよ。その直接の原因は、足利銀行がメインバンクだったからです。あしかが〜よろしく、とかバブルのころに馬鹿なCMを流していたあの足利銀行ですよ。あの悲劇が全国各地に及ぶってことですか?
「ぶっちゃけ、そうだ」
ヤバいぞ、ヤバい。郵政民営化、超ヤバい。ちょっとそっとのヤバさじゃない。洒落になってない。郵政省よ、民業の首絞めプレイをやるつもりか?
だんだん明らかになってきた郵政事業民営化問題のヤバさ。来週、ついにその核心に迫ります!
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