2004.10.14
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第 回
郵政民営化と熊注意 その4
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「目標は、国民から集めたお金を政府が財投債を売って、買ったお金であちこちに分配するという仕組みを早くやめて、民間の銀行や市場に任せて、必要なところに行くようにしようじゃないかというのが目標だったわけだ」
 その話は理解できました。国のなかでグルグルお金がまわって、妙ちくりんな箱モノ行政がバカスカできるのは、健全ではないと思います。だから小泉首相をただの田舎モン虐めと首絞めプ×イ好きのヘンタイだと思っていた件に関しては、ごめんなさいと謝るですよ。
「しかし問題は、郵便局が2万5000あることだ。しかも、そのうちの8割が郵便局の集配業務をしていない。それは本局の仕事だ。それじゃ数の上では大半を占める、特定郵便局がなにをやってるかといえば、郵便物の受付と郵貯と簡保で持っている。ところがこれがほかの銀行とか保険会社と同じになったら、統廃合せざるをえないという方法論になる。つまり採算が合わない。まず第一に、郵便事業はもっともお金がかかる。どうしてお金がかかるかといえば、離島まで持っていかなくちゃならないからだ。それが民間になった場合、どうすればいいのか。やっぱり切り捨てられるだろうな」
 つまり、離島だの僻地の人たちが切り捨てられるってことですか。
「そうだ。過疎地の拠点維持のために、窓口ネットワーク会社がカラオケやったり不動産をなんとかしたりぴあの切符を売ったりして採算を取ろうといってるけどさ、やれると思うか? できないんじゃないかってオマエもこないだ言ってたよな」
 はい、無理だろうと思います。元役人が下手にそんな事業に手を出したら、赤字で破綻する気がしてなりません。
 ボス、わたし、郵政事業民営化の問題点はおおまかに理解できたように思います。つまり、マタギと田舎の郵便局は、いずれ消えてなくなるってことですよね。違いますか。うわああん、そんなのわたしは嫌だあ。小泉首相の馬鹿馬鹿馬場、ちがった馬鹿、そんな改革になっちゃったのなら、そのまんまにしておいてくれたほうがずっとよかったよ、わたしには!
 ついでだからちょっと聞いてください。こないだね、うちの田舎のほうで、ばーちゃんが救急車で運ばれたんですよ。理由は栄養失調なんです。なんでかっていうと、田舎は車社会ですから、郊外店が多くなって、市内が空洞化しちゃって、食べ物が買える商店街がシャッター通りになっちゃったからです。車に乗れない年寄りが、歩いて物を買えないっていうのはそういうことなんです。田舎の郵便局がなくなったら、今度は歩いて年金の引き落としにいけないじいちゃんばあちゃんが、救急車で運ばれることになりますよ。場合によっては、もっと酷いことだって起こりうるでしょう。
 ボス、わたしは今回の一件で、ますます新聞を読みたくなくなりました。鬱になっちゃいました。こんなことなら、何も知らずに引きこもっていたほうがいいですっ。
「そういう政治に無関心な連中が多すぎるから、こういうことになったんだよ!」
 うーん、そうか。わたしにも責任があったのか。わかりました、これからは泣きながらでも新聞を読みます。けれど移行期間ということで、2017年まで待ってくださ……うわー、暴力反対ー!
 右フックと左ジャブで倒れて、郵政事業民営化の授業は終了。
 また来週、お会いしましょう。

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