2004.12.02
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第 回
地球温暖化と北方領土
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「うむ、だからな、鈴木宗男さんが二島返還と言い出したわけだ。まず最初に二島返してもらって、そのあとを交渉したらどうかと言い出したんだけど、いまでも中川昭一経産大臣が、そういう方向もありうると。ただし、もうあと二島、国後と択捉も、日本の領土だということをロシアが確認するならば、そういうこともできるんではないかと言ってる」
 なるほど、二島がどれほどちっちゃくても、とりあえず返してもらうってのは手かもしれません。突破口を開くという意味で。しょうがない、とりあえずそれでいきましょう。
「けどな、そんな話し合いをしてるうちに、北方領土が開発されてしまうかもしれないんだな。いま、北方領土はロシアのサハリン州の一部なんだけど、国後、択捉には現在ロシアの農民たちが住んでいて、そこに私有地の権限を与えるとかロシア政府が言い出しているのだ」
 待て。それは政策が逆行してるっていうか、言ってることとやってることが全然違うじゃないですか。
「そうだ。もともと日本人が住んでいて、いまでも四島に土地を所有している人がいるのに、戸籍なんかもあるし不動産登記なんかもしてるのに。ロシア人の農民たちに自分たちの土地だと主張されたらどうすんだと。ようするに交渉ごとを引きのばしている可能性が高い」
 私有地になったら趣が変ってきますよね。国有地だったらまだしも、自分の土地となったら、みんな目の色が変りますよ。話し合いの余地なんてますますなくなるじゃないですか。
「そう、ロシアがこれをなにがなんでも手放すまいとする理由は、まずひとつはエネルギー問題だ。どうもあそこにはいろんな資源が埋まっているらしい。石油やガス田、それから蟹、魚だのの海洋資源。自然も豊かだし、観光資源としても未開拓だ。そこをどう開発するかだが、ロシアにとっては可能性がいっぱいある。軍事的にも太平洋に出られるし、要所だ。そういうことがあって、なかなか手放せない。だから日本が二島でいいといってしまった瞬間に、あとの二島は返ってこなくなる公算が大きい」
 聞けば聞くほど打つ手なしの北方領土問題だが、この膠着した状況を変えるただひとつの望みといったらアレなんじゃないか。アレとは、地球温暖化である。モスクワが沖縄ぐらい暖かくなったら、ロシアの人間だって、北極のほうがいいと思って、北方領土を手放すに違いない。本能的な南下願望も、それなら消える。地球が破滅するぐらい温暖化したとき、北方領土は日本の手に返ってくる。と、思うんですが、どうでしょう、ボス。日本の未来に希望がわいてきたでしょうか。
「そんなわけないだろ! モスクワが沖縄ぐらいになったら日本列島は水びたしだ。サハリンなんか沈没してるぞ」
 こんなところで今週はおしまい。地球が滅亡するのと、北方領土が返ってくるのはどちらが早いかみなさん一緒に予想しましょう。

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