2004.12.16
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第 回
スポーツマンと中国買春オヤジたち
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 ここでふと、自分が大学生だったころを思い出す。わたしがまだ体育会系の論理を知らなかった、無垢な時代である。
 ボス、そういえばですね、わたしが学生のころ、同級生の女の子7人ぐらいと渋谷を歩いていたら、日体大の学生にナンパされたことがありますよ。バレー部の学生でしたね。
「なんだと、本当か」
 本当です。まずですね、ナンパのために声をかけてくるのは下級生、一番の下っ端なんです。で、ナンパが成立して飲みに行くじゃないですか。すると先輩から順に、可愛い女の子を隣に座らせるんです。
 思い出していくうちに、だんだん腹がたってくる。
 ちなみにわたしの隣に座ったのは、一番下の使いっぱでしたよ。先輩のタバコの買出しをしてるような。どうせわたしはそんなもんだよ、悪かったな。ええ、ボスの言うとおりだ。けしからんですよ、体育会系の野郎どもは!
「うーん、なんといっていいかわからんが、まあ、その件については身の危険がなかったんならそれでよしとしなさい。ちなみに今回の亜細亜大の事件でも、捕まったのは和田という。スーフリの和田といっしょの苗字だな」
 和田には気をつけろってことですかね?
「それじゃ全国の和田さんが怒るだろう。とにかく、集団でそういう猥褻行為をするようなヤツは、昔は刑務所に入ってもいじめられた。集団で、というのは相手の抵抗を徹底的に封じるわけで、最低の犯罪だ。体力もあるヤツが集団で襲ってきたら女性はどうにもならんだろ」
 思うんですけど、その手の性犯罪を犯したヤツは、ネットでいつでも顔写真が閲覧可能にしとけばいいと思うんですよ。なによりの犯罪抑止力になると思うんですけどね。
「うん、それはいいんじゃないか。中国の珠海のほうに、日本のビジネスマン、リフォーム会社の社員200人が買春した事件があっただろ。あのとき中国はインターポールを通じて逮捕すべく、3人の顔写真を配っていた。わたしはインターネットの顔写真を見たんだが、ビン・ラディンと並んで国際手配だ。3人の顔写真のしたには『メイビー、デンジャラス』とか書いてあってさ、笑っちゃったよ。さすがにコイツ、スケベな顔してるなと思ったけど。あれは相当恥ずかしいぞ。そうだな、性犯罪者はネットで顔写真を晒す。ついでに買春オヤジの顔写真も晒せばいい。うん、それで決まりだな」
 え、ちょっと待った、国内の買春もですか? ああ、ええ、うーんと。
 日体大の一件を思い出し、ボスに同調していたわたしだが、ここでふと弱気になった。痴漢の顔は晒すべきだ。レイプ魔ならばなおさらだ。児童買春も犯罪だから晒してくれ。けれど成人女性の買春は、うーん、えーと、どうしたらいいんだ。いや、中国の買春オヤジたちは、顔ぐらい晒されてしかるべきだと思うけどさ。中国、韓国、そして東南アジアでロクなことをしてない日本人には、いずれ鉄槌は喰らわせるべきだったから、これでよかったと思うけどさ。「旅の恥はかきすて」とばかりに国外で買春するオヤジどもに対する刑罰を国内でも設けてほしいし、それがネットで晒す顔写真でもまったくかまわないのだけど、国内における買春についてもネットで顔写真が出回るとなると……。
 身内に犯罪者を抱えたような、歯切れの悪い気分に悩まされた。そうなったら大丈夫なのかよ、うちのクラブ。全員が「メイビー、デンジャラス」になるかもしんない。そうなったらどうしよう。
 体育会系の男子たちよ、精神も健全であれ。頼むから。

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