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いかん、落ち着け、自分。
とにかく昨今のNHKについて、まずは教えてもらわないと。
「ちなみに今回の流れで不払い運動は進んでいるぞ。契約数がどんどん下がってきて、不払い今や40万件。相当すごいぜ。4%超えたんだから」
4%か。多いのか少ないのかよくわかんないですけど。
そうそう、そもそもですね、なんで不払い運動が始まったんです。
「NHKのディレクターが、いってみれば“公金”を横領したわけだ。それが発端な。それから、もう4年も前のドキュメンタリー番組で、放送前に政治家の圧力を受けたとか受けなかったとかいう話が蒸し返された。でもどっちかっていうと、問題はそこにはなくて、“あの人は支払わないのに、どうしてわたしは支払わなくちゃならないの?”っていう国民の気分だよな」
エビジョンイルっていわれてる人、あれ、なんなのです。
「こないだ辞任した海老沢会長というのが、どっかの首領様みたいに強権を発動する人だったので、そういわれているのだ。たしかにNHKというのは、民放のやっかみの対象ではある。世界でも珍しいくらい、設備とか、取材力とか、人材とか、資金も含めて持っているからな。それが結果的に良質な番組を作る大きな力になっているのは事実だ。たとえば『シルクロード』みたいな番組は、中国と提携できるからこそ制作できる。民放にはそんな潤沢な資金もないし、NHKと違って中国と提携すること自体も難しいわな」
まあ、民放のディレクターとかがやっかむ気持ちはすごくわかりますね。
昔、山田太一がエッセイで書いてたんですけど、彼がNHKの大河ドラマの脚本を書くことになって。「獅子の時代」って番組でしたが。それの冒頭に近いシーンで、山田太一、小道具というか大道具として大砲が使いたかった。で、ぽろりと言ったらしいんですよ。
「ここで大砲が使えたらなー」
するとNHKのスタッフがあっさり、
「じゃあ作りましょうか」
と。山田太一びっくり仰天、って話がありました。民放の資金力では無理なことが、NHKだと平気でできるというエピソードだと思いましたが。
そんでまあ、自分の事件、と言っていいのかは微妙ですが、もしわたしの身に起こったことがわたしの疑いどおりだったとしたなら、あくまで仮定ですけど、一匹みつければ百匹っていうように、日常茶飯的に行なわれていることかもしれない。たとえば民放のディレクターがアイディア勝負で作ったけれどチャチな番組を、NHKがアイディアだけもらって根本から取材しなおして、立派な番組にしたてるとか。ちなみにアイディアの借用というのは盗作に当たらないらしいんで。
「それについてはわたしはコメントしない。だが、NHKの人が資金や組織力の面で恵まれているというのは本当だな。『戦争広告代理店』という本がある。ボスニア紛争の話で、講談社ノンフィクション賞をもらっている。著者はNHKのディレクターで、NHKスペシャル『民族浄化』のときの取材が土台になった本だ。NHKの人だから書けた内容だろうとわたしは思うね。ただのルポライターにはできないよ、こういう仕事は。まず、要人にあえないし、資金もない。出版の世界ではよく言われるのだ、ノンフィクション賞はNHKにみんな持っていかれるとね」
つまりなんですか。報道関係者は、NHKに入れなかった時点で負け組ってことですかね。なんか微妙に嫌な話かも。
「だからな、話を不払い運動のほうに戻すと、昨今の、NHKの体質が嫌いだからわたしは払わないというのは嘘で、払ってないやつがいるのになんで払わなくちゃならんのだというのが本音だろ。だから払わないヤツにはNHKの番組が見られないようにすればいいんじゃないか。いままではできなかったけど、2004年の4月にデジタル放送が始まってから、専用のカードを入れなければ受信できないようにすることが可能になった。そうすると受信料を払った世帯だけに見せることができる。ところが、それをやるとガクンと収入が減るのではないかという恐れがNHKにはある。NHK内部のリストラも含めて、料金体制を見直すべき時代がやってきているのじゃないか。公共放送であるから全員に見せなくてはならないという話はないからな」
結局、NHKのなにが悪いのか、さっぱりわからなかった。とりえあずわかったのは、テレビを買ったらNHKと契約を結んだことになるという法律があるってことだけだった。ただし不払いでも罰則のない、ダダ漏れの法律が。
もっと自分が若ければ、
「チクショー、だったらテレビを捨ててやるー!」
となったような気がするんだけど、年なんですかね。話しているうちにどうでもよくなってきました。テレビ、買い換えたばっかりだし。捨てると地球に申し訳ないし。相方と引き落としをめぐって家庭内争議をやるのも面倒だし。
結論。NHKのこの世の春は、きっと絶対、ずーっと続く。金のないやつがなにをいったってごまめの歯軋り。大勢に影響は与えない。
そんなもんじゃないでしょうか。
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