2005.03.10
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第 回
ほりえもんの首の太さとポイズンピル その2
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 たしかに。いかがなものか、ですよね。わたしもそれにはすんげえ引っかかるんですよ。ほりえもんに対する人物の好き嫌いが出るのは、あのキャラクターだから致し方ないと思うし、正直、堀江支持っていう人はどっから湧いて出るのかは、わたしには、“皮膚感覚”として、あんまりピンとこないんです。
 六本木ヒルズに住んでます、金にあかせて女をとっかえひっかえします、なんか顔が脂ぎってます。女に嫌われる条件としては完璧っスよ、エエ。女はこの手のキャラクターが大嫌いです。テレビ局の社員だって中身は大差ない人もいると思うんですよ。でもね、そこはエリート。隠すのはお上手。なのにほりえもんってば、成り上がり者のギラギラした顔が隠せてないんだもん。その財力に任せて、えーとなんだ、年寄りめいた表現しか浮かんでこんのですが「ただれた生活」つーんですかね? そういうのを送ってますって、全身から臭ってきちゃう。これはねえ、女は察しますって。
 あとね、ほりえもんの最終目標が、火星にロケットを飛ばす? それもなんだかなっていうのは先週も言ったことですけど。
「じつは中身は空虚で、したいことはなんにもないんです」
って言ってるのと同じだって。
 で、ボスの言ってる「IT対放送の戦い」であるとか「年寄り対若者の戦い」であるとかの構図っていうのは、そういえないこともないなと思うんだけど、微妙に同意できない。もしそれが正しかったとしても、そもそも「IT」も「若者」も同様に胡散臭いから、どっちがどっちになってもいいやって気がするし、そんなのでほりえもんに同情できるボスの気持ちがわかんない。
 ただ、「エリート対非エリートの戦い」というのはちょっとピンとくる。もっと突き進んで「エリート対成り上がり者の戦い」といえば、もっとピンと来やすくなるけど。で、その成り上がり者の代表としてのほりえもんが、あんまりにも格好悪い、だらしない私生活が臭っちゃうっつーのが、世論全部がほりえもん支持に傾かない理由かなと思う。
 ただねえ、あんまり好き嫌いで物事を語っちゃいかんと思うのですよ。
 日経だったかな? その社説に、

 「株主が取締役会」を選ぶ株式会社制度で、取締役会が株主を選ぶのは尋常ではない

 といった一文があるんだけど、これは正しい気がするんですよね。新興勢力が株を買っても、敵がポイズンピル的な手法を使えば勝負になんない。こっちの構図ができちゃうほうが問題なのじゃないかなと。
 わたしもほりえもんの顔は苦手だ。六本木ヒルズに住んでいると聞けば、いやーん、成り上がり者のおげふぃんだわあと思う。ホントにハマショーの『MONEY』みたいとゲンナリします。あの歌、知らない人のために補足しておくと、こういうフレーズが出てくるんだよね。
「純白のメルセデス」「プール付きのマンション」「最高の女とベッドでドンペリニョン」
 あー、金もってもしたいのはそれかよ、なんて貧相な欲望かと。男の欲望って結局はその程度なんですかと、男性に対する幻想まで壊れそうで嫌です。
 とはいえ、わたしゃ経済学者じゃないけど、株を買い占めた会社が「会社の乗っ取り」ひとつできない自由経済って、なんなのって思うんですが、違うんですかね、ボス!
「そうだ。1980年代にイギリスではサッチャーがビッグバンをやったけど、あのときイギリスの証券市場に外資がドカドカ入ってきた。これをウィンブルドン化といった。イギリスの伝統あるテニス選手権と同様、勝つのは外国人ばかりになったというわけだ。でもおかげで市場は大いに活性化した。国際化するなら、そんなことは覚悟しなきゃな」
 ただまあ、ほりえもんには注文がある。六本木ヒルズに住みたいんだったら住んでいてもいい。ただね、もうちょっと、「それじゃ僕がフジテレビを配下に置いたら、こういう姿勢の報道を行なっていきたい」とかさ、ビジョンを示してくれたらいいと思う。せめて。そういうビジョンが見えてこないのも、なんとなく事態が、
「金にあかせて芸者を身請けする戦争成金の旦那様」
に見えてしまう理由なんではないかと。
 2週連続でほりえもんについて考えた結果、つくづくおなか一杯になったからそろそろ終わりにしたいんだけど、

 「株主が取締役会」を選ぶ株式会社制度で、取締役会が株主を選ぶのは尋常ではない

 これには賛成だということだけは意見を変えないでおこうと思う。
 皆様、いかがなものでしょうか。経済についてはよくわかんないのでね、よければご意見ください。

 なんてことを書いていたらいま、友達から「フジテレビも半年前に時間外取引をやったんだって!」というメールが届いた。ははは、なんかねえ、もう。泥沼ですなあ。

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