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わたしが中学のころというのは「つっぱり」大ブームの時期であった。で、例の中学2年のときだ。これまた忘れもしないぞ、夏にキャンプがあった。わたしは学年でいちばん素行の悪い女子中学生の「行動を監視」するようにと、なぜか担任の教師におおせつかったんである。もちちんこちらは嫌なわけだが、教師はこういった。
「落ちこぼれてグレてしまう生徒の気持ちを理解できるだけの人間になれ」
わけが解らない。学校は勉強に来るところであり、人の気持ちを理解しに行くところではないと情緒欠陥児の主張。しかも当人が学校に行きたくないといってんだから、無理して来させんな、面倒だから。で、わたしがテントでどうしたもんかと悩んでいたら、問題の女子中学生は、
「トイレに行ってくる」
と言い残して、じつは大学生のテントに遊びにいっちゃった。そんなのどうにもできないって! このとき、担当の教師がなにをしていたかというと、
「酒を飲んで酔っ払ってパンツ一丁に」
なっていたらしい。
しかし翌日、問題の女子中学生が自分から、
「アタシぃ、昨日ぅ、大学生のテントに遊びにいってきちゃった。キヒヒ」
と言いふらして歩いたために、大問題となった。
で、とばっちりがどこに来たかというと、わたしだ。
「おまえを信じて任せたのに、どうして彼女を制止できなかったんだ! おまえが勉強ばかりできて人の気持ちの解らない冷血漢だから、彼女はそれに耐え切れず、暖かい理解を求めて他の人のテントに走ったんだ」
これ、作ってないです。マジで言われたんだって。いま思ってもあきれ返って信じられねえ。おかげで問題の女子中学生は調子に乗った。
「わたし、寂しかったんです」
「そうか、可哀想に」
わたしを悪者にすることで、つっぱり女子中学生と教師との、美しい相互理解が生まれたとさ。へっ。
あいつらは馬鹿だから、「平等」の意味をすぐ履き違える。
わたしも馬鹿だが、奴らほど“真性”ではない。だから言う。
教育の平等とは機会の平等であって、結果の平等ではない。
けれど奴らは思っているのだ、結果が平等であるべきだと。
さて、日教組の悪事をもっとボスの口からうかがいましょうか。
「ところが、である。80年代半ばにアメリカが日本の教育を視察にきたことから状況が一変するのだ。アメリカはびっくりした。当時はまだ、日本では受験戦争が続いていたのだな。アメリカは気づいた、詰め込み教育が高度成長をもたらしたのだと。当時、アメリカは日本に押されて不況だった。個性が大事、多様性が大事という教育は国を駄目にするということで、アメリカはゆとり教育をやめてしまう。そして徹底的に詰め込み教育を行なった。クリントンは、言った。『アメリカの財産は教育である。アメリカの国益は教育である』。それで日米の国際競争力が逆転していったのだ!」
クリントン、まっとうなことを言うではないか。葉巻だけの男だと思っていて悪かったよ。でもアメリカにはそんなことを気づいて欲しくはなかったがな。
そうだよ、なんで教育の機会が平等であると同時に、義務であるかといえば、教育とは国益であるからだ。我々は平等に、国益を守る義務のために教育を受けなくてはならないのだ。
真面目に義務を履行している中学生を、「情緒欠陥児」などと苛め抜いた、あの教師たちは、国家にすべての財産を返上しろ! 国力を衰えさせた責任をとれ!
さて、教師の悪口をいっていたら止まるところを知らないので、そろそろ結論だ。あのですね、ボス、ゆとり教育の廃止とともに、もうひとつ、廃止したらいいと思うことがあるんです、国力のために。
「なんだ、聞いてやろう」
あのですね、1970年代だったと思うんですけど、アメリカがやたらと日本人をエコノミックアニマルだのなんだの叩いて、現在ではどこの企業も週休二日制になってしまったじゃないですか。あれ、アメリカの陰謀だと思いませんか。
「ふむ、面白い。先を続けていいぞ」
日本人は騙されて週休二日制を導入しちゃいましたけどね、移行期にわたしの母が言っていた不吉な予言、忘れられないんです。
「週休二日になったら、日本は沈没するわ。考えてもみなさい、雇用者側からすればよ、社員一人当たりにかけなくてはならない福利厚生の費用はかわらないのに、年間何十日もの“有給”を生み出すだけの利益をあげなくちゃ生き残れないのよ。そんな体力のある企業は、日本にそうそうない! 見ていてごらん、週休二日が導入されたら、日本の経済はだんだん翳っていくから」
事実、いま、その通りになっています。どうですか。
「そうだな。それはいえていると思うぞ。それに近い話で、ゆとり教育のもたらす弊害に、二親のうち、どちらかが土曜日を潰さなければならないということがある。つまり、お母さんが土曜日にパートに行きたくても、行けない。これは大変な経済的損失だろう。わかった、君のいうとおり、こうしよう。これからの労働者は、週休二日制を廃止して土曜も働く。義務教育は一切のゆとり教育をやめ、子供は土曜も学校で勉強だ。むかしのようにエコノミックアニマルとなり、経済を立て直すのだ! これでどうだっ」
賛成です、ボス。エコノミックアニマル上等!
日教組の思惑を叩き潰して、もう一度、日本を立て直しましょう。
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