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「なんだと、そんな法律が。けしからーん」
中国の第10回全国人民代表大会(国会のことらしい)で、「反国家分裂法」というのが成立したと聞いて、わたしは大変憤っている。聞けば、この法律、台湾独立阻止を目的としていて、しかもとんでもないことに、そのときには武力行使を認める内容だっていうではないか。
中国め、なんていう野蛮な法律を。反日デモも激化して中国にある、われらがイトーヨーカドーも襲われたっていうし。この国、まったくもって頭くんな。
わたしは、月刊アスキーというPC誌で連載を持っているので、その関係で台湾には二度取材に行っている。というのも、いまのPCのパーツのほとんどって台湾で製造されてんですよね。1回目のときはA-openの工場に行って、基盤にチップを載せるラインの流れ作業を、台湾人の女の子たちと一緒にやった。女の子たちは高校生で、日本でいう夜間学校の生徒たちである。ただ、ここが台湾の学校制度の面白いところで、たしか、3カ月フルタイムで働いて、また3カ月学校に戻るんだよね。これっていい制度だと思う。夜学に通っていると、仕事の疲れからどうしても学業が疎かになるけど、そういうのがないし、働いてからまた仕事をすると、より実社会ではなにを学んでおかないといけないか、がわかるし。
そんな感じでとっても学ぶところのある台湾。そして女の子たちはとっても真面目。会社の寮で暮らしていて、朝の7時になると、すっぴんで、髪をおさげにして、寮から会社までを列を作ってなんと行進。日本の女子高生を見慣れているわれらとしては、これは驚くよね。清楚で、しかもよく働くの。彼女たち、ベルトコンベアで流れてくる基盤のうえに、ダダダダッと連打のようにチップをはめていく。これに加えてもらったんだけど、わたしがトロいので、無償のお手伝いになるどころかラインが止まってしまって、彼女たち及びA-openには多大な迷惑をかけた。あと、ハードディスクのハンダ付けに失敗して、完全に製品1個をおしゃかにした。……こうやって思い出してみると、わたしは台湾の経済に打撃しか与えていない、ロクな日本人じゃねえ。
というわけで、台湾大好き人間の山崎です。
2回目の取材では、民進党の選挙を取材したんだけど、取材したっていうより、ほとんど「陳水扁の選挙の応援にまいりました」になっちゃった。そしたら、つましい服装をしたおじいさんがね、「日本から阿扁(アピァンと読む。陳水扁のあだ名ですね)のために応援にきてくれたのか」と涙を流し、自分の懐から出して、買ってきた暖かいお弁当をくれただよ。でもお弁当、じつは台湾で食べたどの食事よりも味としては悲惨だった。ほらさ、出版社のお金でいくから、それなりにうまいもの、食えちゃうんだよね。けれど、わたしは感涙しながら全部食べたよ。投票権がないからもらえないよっていったけど、おじいさん、泣きながら「いいから食べてください」ってさ。これで食わなかったら女じゃないし、泣かなかったら鬼だろう?
民進党は、中国からの独立を掲げている党である。
で、支持層は、国民党時代の既得権益と関係のなかった人たち。つまり、ぶっちゃけ貧しい。そういう人たちが、熱く、手弁当で選挙活動をしている。すごく感動した。胸が熱くなった。だからわたしも台湾の独立を応援する。
しかしボスこと日本の論点の編集長の渡辺さんが言う。
「そうはいってもなあ、あれ、台湾も大陸もどっちも中国人だぞ」
それは大陸から台湾にやってきた外省人や国民党の人のことでしょ? 台湾にもともといた人は別ですよ。台湾語(ホーロー語と読むらしい)ってのが別にあんだから、文化も違いますよ。そりゃ、国民党以前、大昔の戦乱のたびに、中国から逃げてきた人たちも台湾人の一部であるのは認めますが。
「たしかにそうだ。毛沢東に負けてボロボロになってはだしでやってきた国民党の敗残兵は弾圧した、台湾人を。それで長い間戒厳令が続いた。で、むしろ日本の日帝50年のほうがよかったって言ってる人がいるけど、その『よかった』っていうのも、『犬が去って豚が来た』といわれてるぐらいのもんよ」
むむ、日本は“犬”か……。
ま、オーケーオーケー、細かいことは気にしない。
「中国は建前は社会主義だが、現実には、もう資本主義をやってる。アメリカも日本も台湾が中国の一部になってしまったら脅威だ。軍事的な意味合いが、台湾が台湾であることによって全然違ってくる。だけど、そのことよりも言いたいのは、政府がいってるほど対立関係は台湾人と中国人のあいだにないんじゃないかってことだ。というのも、中国のファッションにしても、流行にしても、ほぼ台湾と似通っている。若い人たちはもうそれほど中国と台湾の違いという意識はないんじゃないかと」
でもね、わたし、民進党の選挙対策本部でおばあさんに日本語でものすごい説教受けましたよ。激烈なアジテーションでした。
「日本人はなぜ靖国のことを持ち出されては中国人に頭を下げるか。自分の国の英霊を弔うのに、なんのためらうことがあるか。堂々と行きなさい。あいつらなんか、蹴飛ばしてやりなさい!」
ひえー、おばあさん、そんなこと言っていいんですかと怯えたが、ごもっともっていうかね、中国にこびすぎるんですよ、日本は。あんなに反日運動をやってる国なんぞにどうして尻尾振るんだか。格好悪いんですよ、日本。
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