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いや、ボスとのんびり反国家分裂法の話をしてるうちに、反日運動が激化してエラいことになってしまいました。で、急遽、よその国とよその国の争いはおいといて、自分たちんとこに目をむけます。
ボス、中国美人に騙されてる場合じゃないですよ!
彼らの気持ちってのはこれですよ。可哀想に、日本人学生。殴った奴、出て来い、15年来愛用の重たいアイロンでぶん殴ってやる!
「どうどう、押さえて押さえて。そう怒るなよ」
ボス、わたしを牛扱いですか?
中国美人にたぶらかされた、この非国民が。
「だからさあ、日本人がそうなっちゃうのが、中国の、いや、正確には中国共産党の思う壺なのよ」
なにが思う壺ですか。だいたいね、日本人は大人しすぎるんですよ。わたしゃ家に帰ってこの連載の原稿を書き終わったらネットにつないで、中国のサイトの掲示板(書き込みサイト)を荒らしに行くのに加わりますよ。いまね、日本のネットは祭り状態なんですよ。中国人の掲示板を荒らしにいくので。わたしも中国人のサイトの掲示板に、ウ×コのアスキーアート(まあ、簡単に言えば絵のことです)を貼って荒らしてくれるわ!
「ネットのことはあまりわからないが、それは小学生並みの嫌がらせなんじゃないの? まあとにかく黙ってくれ。わたしが話せん。ほら、ケーキでも食え。サバランあるぞ、サバラン」
む。ちょっと腹が減ってはいたんですがね。むしゃむしゃ……うまいですね、このケーキ。ふむ、マジうまい、食生活貧しいからな。……むしゃむしゃ。
いかん、こんなことでは懐柔されませんからね! むしゃむしゃ。
「よし、この隙に話すか。こないだ中国のアルバイトの学生の話をしたよな」
ボスをたぶらかした中国美人ですね。
「嫌な言い方するなよ。いい子なんだよ。で、彼女に聞くと、中国では物凄い格差がある。彼女は農村出身なのだけど、沿岸部と農村部の格差が広がっていて、給料なんかも10倍ぐらい平気で違うらしい。おまけに農村の人たちは都会に行って働くことがなかなかできない。就職するにしても、中国共産党に賄賂を使わないといいところに就職できないらしいんだな。だからどんどん経済格差が広がってしまった」
賄賂かあ。中国人って昔っから賄賂大好きですよね。人の国のこといえないかもしんないけど、どの時代をとっても役人への賄賂で国が腐敗してって歴史が現れる気がする。
「かつて、社会主義というのは農民が一番良かったのだが、それが逆になってしまった。だから不満がすごく貯まっている。そしてもうひとつは共産党の一党独裁、そこで何が行われているかというと、政府は共産党員だから、さっき言ったように賄賂を彼らは取るわけだ。とくに地方なんかひどくて、賄賂がいくらでもまかり通ってしまうらしい。彼女が言っていたけれども、彼女の友達が、地方のちっぽけな銀行に就職するために、1年間一生懸命お金を貯めて、そのお金で買った贈り物を共産党の党員に渡した。それでようやく就職がかなったと。一方、有力者の子は、簡単にいい銀行に就職できてしまう。成績のよしあしなんか関係なく。で、その彼女にこの事件をどう思うかと聞いたら、日本は本当に素晴らしいと彼女はいう。一生懸命やれば、なんとかなるから。ところが中国は、一生懸命やってもなんともならない。そんなとこわたし居たくないと」
まあね。日本に来て、中国という国を外側から眺められるようになればそうでしょうよ。でもね、そんな人ごくわずかで例外的であり、大半の人はああやってジャスコ囲んだり日本人学生殴ったりして喜んでるわけじゃないですか。それを思うといくら経済格差が酷くたって同情する気になれないですよ。
「まあいいから聞きなさいよ。今回の事件は、ネットが原因だといわれている。書き込みサイトを通じて、デモの情報なんかが拡散したと」
らしいですね。っていうか、以前から中国人ハッカーは、ずーっと日本を標的にしてきましたからね。中国のネット文化=反日運動といってもいいくらいに。ハッキングに長けていればやり返してやりたいんだけど、そんな知識まったくないし。でも、荒らしならやれるから。帰って原稿書き終わったらわたしも荒らしに参加ですよ。
「そうやって脊髄反射しないでさあ、ちょっとは考えてから行動に移しなさいよ。ネットができる環境にいる人たちっていうのは、中国じゃお金持ちだよ。で、共産党の子弟はお金持ちが多いだろ? だからさ、共産党が日本は敵だといえば、素直に日本を攻撃する。つまり、今回のデモは、政府の指導したデモに近いというか、官製デモってズバリいっても差し支えないわけ」
ふむ……それはそうですね。いくら中国人のネット人口が増えたとはいえ、まだまだPCを買うどころじゃない人たちがたくさんいるのは、わたしでも解ります。共産党の子弟。そうかも。
「で、地方に行けば、いろんな不満がたまっていて、暴動に近いことが起きている。仕事よこせ暴動であるとか、地方の有力者を攻撃する暴動だ。しかし、それは中国政府がほとんど弾圧している。なぜかというと、昔、1989年に天安門があって以来、反政府運動に対しては大変厳しい」
あー、天安門か。嫌なこと思い出しちゃった。いきなり学生を戦車で、のしイカに……。あれから中国って妙な国に変わったっていうか、旅行に行きたい感じの雰囲気の国じゃなくなったんだよな。それまでは素朴ないい人たちってイメージが強かったのに、行くと危険な目にあいそうな国ナンバーワンっていうか。なんでだろう。
「それには理由がちゃんとある。反政府運動を弾圧するかわりに、反日デモに関しては黙認してきた歴史だ。今回の場合は、江沢民元国家主席が90年代から愛国反日教育を強化した。それが刷り込まれた世代が、ネットの中心となってきてるわけだ。地方で起きている不満分子の暴動は政府が押さえてしまうのに、ネットが煽った反日デモは黙認する。インターネットを使える層を考えれば、デモは官製である可能性が高い。つまり、どう考えるかというと、これは中国のね、内政問題だと考えたほうがいいんじゃないかと」
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