2006.01.12
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
第 回
耐震強度偽装問題と庶民感情 その2
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 前回、「姉歯設計士はズラを脱いで土下座すべし! さすれば国民感情は和らぐ」と書いたら、わたし自身がズラを脱いで謝罪したほうがいいようなことをこの欄でやらかしてしまった。それについては次回、改めてこの場をお借りして、公的に謝罪します。

 さて、耐震偽装問題だが、前回の結論では、そもそも官が行っていた検査を民にゆだねてしまったところに国の責任があるので、公的な資金注入についてはいたしかたなし、ということだった。とはいえ、である。そろそろ我々日本人が自覚すべきなのは、Noと言えない日本がアメリカにゴリ押しされた結果、なんでもかんでも「公」が面倒みてくれる社会じゃなくなりつつあることだろう。つまり、いろんな決断が「自己責任」になりつつあるということだ。
 そこで、偽装マンションをつかまされないためにはどうすればいいかを考えてみた。まず、わたしとしての意見は月並みだけど、
「マンションを買うなら、やっぱり公庫付きにするのが最低の自己防衛」
ってことである。
 マンション購入について勉強したことのない人のために、念のため解説しておくと、「公庫付き」のマンションと、「公庫利用可」のマンションには、大きな違いがあるんである。
 公庫付きマンションの場合だと、「公庫事前審査」というのがあって、これには、


(1)事業主の実績審査
(2)事業計画審査
(3)建築基準審査
(4)構造基準審査


が含まれるのだ。さらに、「公庫工事中審査」、「公庫完成審査」というのがあって、公庫が全面的に融資をするに足るだけの基準を満たしたマンションかどうかを、徹底的に審査するんである。公庫は、自分とこが全面的に融資するマンションには、どえらく厳しいのである。
 これが、「公庫利用可」になると、これらの審査はまったく不要となる。たんに、「専有面積が50平方m以上240平方m以下」、「1棟の建物の住宅部分の延べ床面積が原則として1000平方m以上である」という2つの条件を満たせば、なんと、公庫も、利用できるマンションになってしまうんである。つまり、「公庫利用可」では、公庫による建物の検査はついてこない。
 今回の耐震強度偽装マンションのひとつとして名を上げられている「グランドステージ藤沢」なんかも、調べてみたら「公庫融資利用可」。また、取り壊し第一号となった「ラ・ベルドゥーレ白井」も「公庫融資利用可」。ついでに調べてみた「セントレジアス船橋」も「公庫融資利用可」。こうなってくるとやはり、
「“公庫利用可”どまりのマンションって、調べられるとヤバい何かがみつかりそうなぐらい、後ろ暗いことがあるんでないの?」
と思いたくなってくる。まあ、すべての「公庫利用可」マンションを否定するわけではないが、この時代、少しは考慮に入れてもよさそうだとわたしは思う。




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山崎マキコ自画像
山崎マキコ
1967年福島県生まれ。明治大学在学中、『健康ソフトハウス物語』でライターデビュー。パソコン雑誌を中心に活躍する。小説は別冊文藝春秋に連載された『ためらいもイエス』のほか、『マリモ』『さよなら、スナフキン』『声だけが耳に残る』。笑いと涙を誘うマキコ節には誰もがやみつきになる。『日本の論点』創刊時、「パソコンのプロ」として索引の作成を担当していた。その当時の編集部の様子はエッセイ集『恋愛音痴』に活写されている。
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