シャッターチャンス2
三脚なんていらない

2week_jpg35の画面サイズを知っているだろうか。1コマは、24m/m×36m/mしかないんだ。こんな小さな四角の内に、人や海、空が入ってくるんだ。画面一杯に全身を入れても、顔はせいぜい3〜4m/mくらいにしかならない。その小さな1コマを8×10四切、全紙に伸ばすのだから大変だ。中途半端なものを画面に入れ、あとからトリミングなんてことは、考えてはいけない。とにかく何が必要なのかを考え、タイトなフレーミングで、“合理的”にこの24×36m/mのフレームを使うことが大事だ。

そのためには、カメラを持ってどんどん動く事が大切なんだ。アシなんか付けて、ノンビリ構えていたら撮れっこない。手持で動き回るんだ。そして、多少キュウクツそうなくらいに、画面一杯に女性を入れることだ。君が入れたければ、足先だって、手先だって“曲げて”の一言で画面の中に入ってくるんだ。とにかく画面の内に押し込めてしまうことだ。

僕のフレームの中で、女性が気分よく動いている。風に髪がゆれる。ガンガンシャッターを押す。髪をかき上げながら、彼女が、ふいに砂の上に腰をおろす。僕も同時に、長い玉の付いたニコンと共にすわる。

もし、このとき、三脚をつけていたらどうなると思う。彼女がすわった途端、フレームの中は、ブルーだけの世界になる。カメラを下にふってもいいが、せっかくのブルーの海がなくなり、バックは、白い砂だけになってしまう。三脚を縮めるとしたら、もっと大変だ。縮めている間、動きのある彼女は、二度と撮れないんだ。女性の写真は、この一瞬が勝負といっても過言ではないくらいだ。

手ブレを恐れて、三脚ばかりに頼っていると、こんな大きな問題も起こるんだ。ここで手ブレについて話す。

一般的には、焦点距離の数値を、分母に置き換えたくらいのシャッタースピード、たとえば、200〜300m/mくらいのレンズなら、目安としては、1/250秒、これ以下は手ブレの恐れありというわけだ。しかし、これはあくまでも目安で、慣れれば300m/m、1/60秒手持ちだって不可能ではない。

現に、僕は平気でやってしまう。もちろん、36枚すべて手ブレなしという訳にはいかないけど、一瞬のチャンスをのがしたくないから手持なんだ。それに僕の場合、三脚をつけると、気持も固定されているような気分になるんだ。

画面の中は、ほとんどが彼女の体、まわりにはほんの少しの白い砂と、青空だけだ。しかしこれだけでも充分、南の島の暑い空気と、すき通った海を感じてもらえると思う。それに彼女の楽しそうな笑顔は、三脚を縮めている間になくなっている笑顔かも知れないんだ。



35(サンゴー)
35ミリサイズフィルムのこと。最も一般的なフィルムだ。もともとは映画用サイズのものだった。両脇の穴はパーフォレーショント呼ばれ、映画用フィルムの名残だ。

8×10
エイト・バイ・テンあるいは単にバイテンとも言われる。8×10インチのフィルムサイズ、プリントサイズのことだ。

四切
10×12インチ(250×305ミリ)のプリントサイズのこと。8×10サイズは六切(203×254ミリ)とも言われる。

トリミング
犬の美容師をトリマーと言うが、これはカッテングする人のこと。トリミングはプリントの時にネガに写りこんでいる不要な部分をマスクで切り除くこと。撮影の時にきちんとフレームを決めていれば、トリミングの必要はない。

焦点距離
50ミリレンズ、100ミリレンズ、300ミリレンズなどというが、その50ミリとか100ミリとりうのがレンズの焦点距離。50ミリを標準レンズとして、それより短い焦点距離のものを広角レンズ、長いものを望遠レンズと言っている。


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