ドンと鳴ってしまえばどうということはないが、100メートル競走のスタート前は、イヤなもの。写真でも同じ。1枚のシャッターを押してしまえばなんということはないが、モデルが、「おはようございます」などと言いながら、スタジオに現れるときは、いまでもドキドキする。そんなとき、いつも僕は、とにかくシャッターを押さなきゃ始まらない。とにかく押してから考えようと思う。押す前の考えすぎは、よい結果を生まない。頭のなかだけのアングルやポーズには、だいたい裏切られるんだ。
僕の撮影は、ロケの場合特に、女性が薄着のことが多い。だから、当然、撮影もスピードを要求される。薄着や裸の女性を、そんなに長時間、太陽の下にさらす訳にはいかない。だから、どんどん素早く撮るんだ。ロケ場所にしてもそうだ。ひとけのない浜辺なんて、ハワイやサイパンといえどもそうない。たとえあったとしても、行きにくく狭い浜辺がほとんどだ。腰まで水につかりながら、岩場を渡って行くことなんかザラにある。撮影場所にしても、いい足場の所なんて望めない。足場の良い所の方が、カメラをしっかりホールドできるが、そんなことに、かまっていられない。1枚でも多く撮ることのほうが大切だ。
それに裸の女性を動かすより、多少、足が痛くても、カメラに波しぶきがかかっても、僕がガマンするか、移動したほうがいいに決まってるんだ。カメラの都合で裸の女性を動かすやつは、きっとロクなカメラマンにはなれない。
こうして、なるべく短時間で撮り上げるんだ。考えごとは、シャッターを押しながらすればいい。始まる前や、カット、カットの合間に、薄着の女性を待たせたまま、考えてしまうようなことだけはしないで欲しい。足が痛くても、考えがまとまらなくても、とにかく押して、押しながら考えろ。そうすれば、きっと、頭の中で考えたアングルやポーズを超えた、絶妙の一枚が生まれるはずだ。
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