3月30日、大阪市では、カラ残業によって公金を不正に受給していた職員計6331人(全体の13%)の処分を発表した(懲戒処分に相当する戒告は課長職の135人)ばかりだが、今度は、大阪国税局が、神戸市が職員に支給していた退職祝い金や永年勤続者への記念品について、給与所得にあたるとの疑いを強め、税務調査にとりかかった。昨年来、改めて一連の地方公務員の厚遇ぶりが浮き彫りにされることになった。いっぽう総務省は、このほど、定員の削減や給与制度の適正化を主な内容とした「地方行革の指針」を全国の自治体に通達、2005〜09年度の5年間で集中改革プランを達成するよう求めた。
大阪市のケースは、たしかに目に余るものだった。たとえば、職員が掛け金を負担し合う大阪市職員互助組合には、掛け金の2倍にあたる30億円が補助金として公金から支出されていた。一人あたり年間8万4000円。この金で観劇やスポーツ観戦できる共通利用券(2万1000円分)や永年勤続の記念品を配布、退職のさいには退職金とは別に給付金を支払っていた。市当局は、地方公務員法(41、42条)を根拠にして「職員にいい仕事をしてもらうための元気回復事業だ」と説明、違法性はないというが、補助金支出について市議会に説明はなく、情報公開もしていなかった。このほか、不透明な特殊勤務手当、背広の支給、結婚貸与金(結婚したときに貸し付け、4年以上勤務すれば返さなくてもよい)など過剰な福利厚生も行っていた。いうまでもなく、市当局と職員、とりわけ市労組との長年にわたるもたれ合いがその元凶だ。
同様の例は福岡県でもみられた。同県内の64市町村の職員福利厚生組織などでつくる社団法人「福岡県市町村福祉協会」は昨年4月、自治体の補助金などを財源にして職員に支給してきた退会給付金(シニアプラン)の廃止を検討することを決めた。この"第2の退職金"について、その年の2月、大阪高裁が「退職手当以外に高額の退会給付金を支給することは職員厚生制度としては本来的なものではない。補助金支出は公益性がなく、地方公務員法の趣旨にも反する」との判決を下したからだった。
このほか、「感染予防のため」と称して保健所職員に背広と革靴を支給(東京・世田谷区)したり、教職員にジャージーなどを支給(横浜市)する。メガネを買うと健康管理名目で補助金を出す(京都府)、徒歩通勤手当を支給(大阪・池田市)するなど、常識の範囲を超える手当があった。総務省では、これらの厚遇措置を是正するため、28種類あるという手当を総点検して給与の適正化をはかるとともに、団塊の世代の退職が終了する2010年4月をめどに定員目標を定める方針だ。04年4月現在、地方公務員は約308万人、その人件費は約26兆4000億円(02年度決算ベース)。地方分権の前提のひとつに自治体財政の健全化がある。三位一体改革(交付金、補助金の削減、税源移譲)の議論がそれだが、こうした自治体のお手盛りが続くかぎり、行政のスリム化など、絵に描いたモチだ。
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