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政府答弁書
2006.02.02 更新
 1月30日、米国産牛肉の輸入再開にからむ政府答弁書をめぐって衆院予算委員会が深夜まで紛糾、このため予定した補正予算案の衆院通過は翌31日にずれ込んだ。午前の予算委で、中川昭一農林水産相が、「米国への事前の現地調査を実施していなかった」と答弁したのが発端だった。これに対し、民主党は、閣議決定で決めたはずの「政府答弁書」を無視したとして責任を追及し、農相の辞任を求めた。審議中断の後、夜になって政府は、統一見解を示して理解を求めたが民主党は納得せず、与党の賛成だけで補正予算案を可決した。

 国会議員は、国会の会期中に、衆参両院の議長を通じて政府の見解を求める「質問主意書」を提出するが、「政府答弁書」はこれに対する回答だ。国会法(74条)の規定によると、政府答弁書は閣議で決定したうえ議長を通じて質問した議員に送られるほか、全議員に配布され、両院のホームページで閲覧できる。政府は、質問主意書が出されてから7日以内に回答することが義務づけられており、国会答弁と同じ重みを持つ。最近は、鈴木宗男衆院議員(あっせん収賄罪の被告として控訴中)が外務省を批判する質問主意書を連発(昨年の特別国会で72件中、4割弱の28件)し、注目されていた。

 民主党の川内博史衆院議員は、昨年10月28日、「BSE(牛海綿状脳症)問題に関する質問主意書」を提出、このなかで、「米国産牛肉の輸出再開以前に、渡米して対象工場における規制の遵守の確認をすべきだ」と政府の見解を求めた。これに対し、11月18日の政府答弁書では、「輸入を再開することとなった場合には、輸入再開以前に担当官を派遣して米国における我が国向け牛肉にかかわる食肉処理施設に対する現地調査を実施することが必要と考えている」という回答だった。ところが、実際に農水省と厚生労働省が現地調査をしたのは、政府が輸入再開を決定(12月12日)した後(13〜24日)のことだった。民主党は、これを、閣議決定して回答する政府答弁書の持つ重みを否定し、国会(立法府)の権威を傷つけた重大な違反行為だとして追及、中川農相は最初は非を認め、「自らどういう責任にしたらいいか考える」と答弁した。しかし、その後は発言を修正し、「総合的に判断して食の安全を守るという趣旨から逸脱していない」と釈明した。

 今回の米国産牛肉の輸入再開に対し、民主党はじめ野党は、食の安全をないがしろにして日米首脳会談(11月16日)の手土産にした、つまり米国の圧力に屈した結果だと批判してきたから、この失態に勢いづいた。というのも、小泉首相は「責任は米国にある」と再三にわたり答弁していたからだ。しかし、今回、日本側にもミスがあったことで、責任の一端を背負うことになった。結局、政府・与党は、中川農相に「衆院に対する十分な説明が足りず、結果として重く責任を感じる」と陳謝させるとともに、「農水省などの当時の認識、考え方を内閣として是としたものであり、特定の行為をなすことを決定したものではない」との政府統一見解をまとめた。いっぽう、前原民主党代表は「閣議決定に違反した責任は重い。当然ながら首相は農相を罷免すべきだ」とあくまで中川農相の進退を追及していく考えを示した。



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