2003年4月の郵政公社発足に向けて、国会に提出された4法案のうち、もっとも論議を呼んだのが「信書便法案」である。
この法案が規定する民間の参入方式には「全国参入」と「特定サービス型」の二つがあり、「全国参入」企業として政府が念頭に置いていたのはヤマト運輸だった。ところが、当のヤマトは「参入断念」を発表。というのも、総務省のつくった法案には「全国まんべんなく10万カ所に“ポスト”を設置すること」等の厳しい参入条件が設けられていたからだ(自民党郵政族の求める条件はさらに厳しく、ポストは郵政公社と同じ18万カ所)。ヤマト運輸が参入できないのであれば、参入できる業者など当面あるはずがなく、この法律は事実上「民間を参入させないための法律」になってしまう。その後、総務省はポスト設置の条件をやや緩めたが、ヤマト側は態度を硬化させたままだ。
郵便事業を脅かす宅配便業者として、旧郵政省の時代から総務省と対立してきたヤマト運輸の小倉元会長は、郵政民営化が持論の小泉首相とは同志といえる。しかし、郵政族の抵抗を払いきれない小泉内閣には失望の体だ。「信書便法の新設などより、郵便事業の国家独占を決めた郵便法の撤廃のほうが先決」と怒りを隠さない。
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