5月13日、早稲田大学で行われた特別講義で、講師を務めた安倍晋三官房副長官が日本の核武装を容認するような発言をしたことが「サンデー毎日」で報道され、にわかに「核武装論争」が持ち上がった。
実際には、安倍官房副長官の発言は、「自衛のための必要最小限の核兵器保有は憲法上かならずしも禁じられていない(しかし、非核三原則を堅持し、かつ原子力基本法と核兵器不拡散条約の規定もあるため保有できない)」という従来の政府見解から逸脱するものではなかったが、その後、非核三原則見直しもあり得るかのような福田康夫官房長官の発言が報道され、火に油をそそぐ結果になった。
折しも国会では有事関連法案が審議されており、現職の官房長官と官房副長官の発言は、有事法制の成立をなんとか阻止したい野党にとって格好の攻撃材料となった。結局、与党は今国会での有事法制の成立を断念した。
田久保教授の上記の発言は、「万が一、国家が生きるか死ぬかという状態に置かれたときのために、核武装を考える余地を残しておいたほうがよい」という意味で、近い将来の核兵器保有を論じたものではない。しかし、日本の「非核」は現実にはアメリカの核の傘の下で守られているにすぎない。傘がなくなったとき、「それでも非核を貫く覚悟が果たして日本人にあるのか」という田久保教授の問いかけは、きわめて重いものをもっている。
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