今年4月、定期預金などを対象にペイオフ(金融機関が破綻したときの払戻保証額を元本1000万円とその利息までとする措置)が解禁されるまで、金融機関がつぶれても預金は全額戻ってくるのが当然だと思っていた人が多いだろう。しかし、預金はもともと1000万円までしか保証されていなかったのだ。それでも、「銀行はつぶさない」という大蔵省の方針があったおかげで、預金者が不安を抱くことはなかった。金融機関の破綻が相次いだ96年になって、ようやく“特例”として全額保護の仕組み(2001年3月までのペイオフ凍結)が設けられた。金融不安が高まるなか、ペイオフを凍結しなければ、より安全な銀行へと預金の預け替えが行われ、結果的に体力の弱い金融機関から資金が流出するおそれがあったからだ。
金融機関の体質改善はその後も進展せず、議論の末にペイオフ凍結は1年延長された。すなわち2002年3月まで凍結し、その後2段階で解禁されるというものだ。今年4月に定期預金が解禁対象となったのはその皮切りで、来年4月には普通預金と当座預金に対しても解禁される。いわゆるペイオフ完全実施である。
しかし、今年4月の一部解禁によって、すでに“弱小”金融機関からの資金の引きあげが起きている。このまま完全実施に踏み切れば、地域金融機関などの破綻につながりかねないとして、完全実施慎重論がしだいに台頭してきた。保守党は完全実施を「別に法律の定める日まで」延期するための預金保険法改正案を独自に作成しており、与党の金融問題プロジェクトチームはこの案を軸に延期を実現させる構えだ。再度の凍結延長には強硬に反対してきた金融庁もついに動き、当座預金だけは全額保護を続ける方向で検討に入っている。
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