小泉内閣のもとではじめて死刑が執行されたのは、2001年12月末。2名の死刑囚の1人には、被害者の遺族から「生きているからこそ、償いの気持ちも生じる。刑を執行しないでほしい」という、きわめて異例の恩赦要請が出されていた。にもかかわらず、森山真弓法相の判断によって、刑が執行されたことに死刑廃止派が激しく反発。超党派の国会議員による「死刑廃止を推進する議員連盟」(代表・亀井静香衆議院議員)の大島令子幹事(社民党)は、衆議院法務委員会で、遺族の同意を得て撮影した処刑者の遺体の写真を法相に見せ、「残虐な刑罰を禁じる憲法に違反する」と主張した。
世界的に見れば、死刑存廃をめぐる論議が廃止の方向へ傾いているのは明らかである。現在、死刑廃止国はすでに世界の半数を超え、死刑執行を続ける「存置国」の数を上回っている。つい先日も、トルコ国会が死刑廃止を決議し、EUへの加盟条件をクリアした。こうしたなか、先進国中いまだ死刑制度を存置するアメリカと日本には、厳しい視線が向けられている。
しかし、死刑存続を支持する国内世論は依然として根強い。その根拠は、第一に犯罪抑止力への期待、第二に被害者遺族の応報感情への配慮である。
3年前、妻と11カ月の娘を18歳の少年に殺された本村氏は、仕事から帰宅して変わり果てた妻を発見したときの衝撃を語りながら、犯罪の残虐さを忘れて刑罰の残虐さを訴える死刑廃止論者の身勝手を告発する――「そもそも刑罰は残酷で苦痛を伴い、人々が畏怖する存在でなければ意味がないのではないか」。
|
|