東京学芸大学の山田昌弘助教授が『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)を上梓したのは1999年のこと。以来、「パラサイト・シングル」は親のスネをかじって気楽に生きる若者の代名詞となった。失業率が4%台から5%台へと上昇するなか、若者たちは「好きでフリーターをやっている」とされ、政府の雇用対策の対象とはされなかった。
そうした風潮に抗して、「若者たちは好んでパラサイトしたり、フリーターになったりしているわけではない」という論陣を張っているのが東京大学の玄田有史助教授だ。
総務省の発表によれば、2002年6月の完全失業者は374万人、そのうち失業給付や年金のない「無収入者」は190万人で、うち100万人以上が25歳未満の若年層である。彼らが企業の新規採用抑制のあおりを食っているのは明らかだ。
彼らの多くは生活費を親に依存して暮らしている。中高年の生活苦が自殺率を押し上げているのに比べれば、たしかに若者の失業にはあまり深刻さが見られない。だが、それを放って政府が中高年の雇用対策にばかり目を向ければ、無職やフリーターの若者はいつまでたってもビジネス社会の中枢を担えるようにならず、一方企業も世代交代できずに衰退していく――玄田氏が警告するのは、まさに「将来の日本の危機」なのである。
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