8月26日、来年4月に発足する日本郵政公社の総裁に生田正治・商船三井会長が就任することが決まった。総裁の人選には、官僚OBではなく、純粋の民間人の中から選ぶという方針のもと、小泉純一郎首相みずから動いた。当初は就任を固辞していた生田氏を説得したのも首相だった。経済同友会の副代表幹事も務める生田氏は、小泉首相が進める構造改革を支持する財界きっての論客であり、郵政3事業(郵便・郵貯・簡保)と政府系金融の廃止が持論だ。しかし就任決定後は、郵貯・簡保の民営化については「内閣や政治が決めること」として明言を避けている。
一方、首相の私的懇談会「郵政3事業の在り方について考える懇談会」(田中直毅座長)が9月6日に提出した最終報告書では、郵政事業が将来民営化する場合の経営形態などを一本化できず、民営化の早期実現は遠のいた。背景には、懇談会内部で民営化に積極的な委員と慎重な委員の意見がまとまらなかったことがある。郵貯・簡保については巨額の資金が財政を支えている現状をどうするか、郵便はユニバーサル(全国一律)サービスを維持できるかどうか、が積極派と慎重派の対立点となった。
郵政公社は、郵政事業庁などが現在手がけている3事業を引き継ぐ国営企業で、その運営には独立採算制や企業会計が導入される。総務省の試算では、公社の発足当初から郵便部門は債務超過、郵貯の自己資本比率は1%未満と厳しい状況にあるが、敏腕経営者として知られる生田氏の手腕が注目されている。
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