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写真 日本の技術者はどんな画期的な発明をしても報われない。私が裁判で完勝することで、社員が会社に従属する仕組みを変えたかった
中村修二(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)

9月19日、青色発光ダイオード(LED)の特許権をめぐり、東京地裁で争われていた裁判で、中村氏への特許権の帰属を認めない中間判決が下りた。判決後の記者会見で。

 中村氏が青色発光ダイオード(LED)を発明したのは、日亜化学工業に勤務していた時代のことである。光の三原色には赤・緑・青があるが、そのうち青だけが技術的にLED化が困難とされていた。この発明によって、ほぼすべての色をLEDで表現することができるようになり、世界が注目した。だが、それほどの画期的な発明にもかかわらず、中村氏には社内規定で2万円の報奨金が支払われたのみだった。その後、中村氏は退職して米国の大学の研究者に転身、改めて日亜化学に20億円の支払いを求める訴訟を起こした。「青色LEDの特許は誰に帰属するのか」「発明の対価はいくらか」という2点を争うためである。今回の中間判決では、ひとまず帰属問題の結論が出た。今後は対価をめぐって争われるが、中村氏は「仮に20億円の支払いが認められても控訴する」と、あくまで帰属にこだわる決意を見せている。
 この裁判は、特許に対する日本企業の評価の低さを露呈するきっかけとなり、企業と研究者の双方から注目されてきた。9月14日には味の素の人工甘味料の発明を担当した元社員が、やはり20億円の支払いを求めて会社を訴えた。また11月には、DVDの読み取り装置の特許をめぐって日立製作所と元社員の間で争われていた訴訟の判決が出るなど、企業内研究者の立場は大きく変わりつつある。
 2002年7月、政府は「知的財産戦略大綱」を決定、特許の扱い方などを含めた知的財産戦略に本腰を入れる姿勢を明らかにした。「知的財産立国」への道は、いまやっと始まったばかりだ。



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