劇団「青春五月党」を主宰する劇作家として知られていた柳美里氏が、文芸誌「新潮」に自伝的小説「石に泳ぐ魚」を発表したのは94年のこと。ところが、この小説の副主人公である在日韓国人女性の生い立ちや顔に腫瘍があるといった特徴が、作者の知人の女性にそっくりだったことから、女性が出版差し止めの仮処分を東京地裁に申請、その後正式な裁判となり、今年9月、「モデル女性の人格権を侵害した」として最高裁で出版差し止めの判決が確定した。
今回出版される改訂版は、女性の手術歴などを削除し、モデルが特定できないように修正を加えたもの。だが、女性側弁護団は「この小説の存在が知れ渡った以上、修正したからといってモデルが特定できないとはいえない」として、同じ25日に記者会見を開き、「(作品が)有名になったから売ってやろうという商業主義だ」と激しく批判した。
改訂版は今月31日に新潮社から発売。初版部数は文芸書としては破格の5万部だという。表現の自由かプライバシーの侵害か――8年に及ぶ論争の決着はまだついていない。
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