シーズン前から大方予想されたとはいえ、日本を代表する4番バッター、巨人軍・松井秀喜外野手(28)の大リーグ挑戦宣言は、やはり球界を揺るがす大地震だった。「無念だが、強制はできない……」(長嶋前監督)、「考えたくなかった。残念……」(原辰徳)――慰留に務めた首脳陣の口から出る沈痛な言葉が物語るように、松井自身、苦渋の決断だったようだ。実際、記者会見で、口をついて出るのは「ファンを裏切るようで申し訳ない」「わがままを許してくれるかどうか……」という、10年間在籍した巨人軍とファンへの気遣いばかりで、笑顔はなかった。
日本人の大リーグ観戦に、また希望の星が誕生したのも事実だが、ぽっかり空いた4番打者の穴を巨人はどう埋めるのか――星野監督の発言は、明らかにストーブリーグに対する牽制だ。11月5日、案の定、近鉄バッファローズの“いてまえ打線”をひっぱった強打者・中村紀洋内野手(29)がFA宣言。早くも巨人が獲得に乗り出し、4年契約で30億円の条件を提示したという。巨人に対して「カネにあかせて一流選手を集める」との羨望とやっかみが集中するのはいつものことだ。しかし、近々、ヤンキースのGMが巨人との業務提携のために来日する予定で、「松井争奪戦に先手」(日刊スポーツ11月6日付)の見出しが躍った。これらの糸をつなげると、やはり星野監督が指摘するように、巨人は松井のFA宣言を皮切りに、来期に向けてすでに仁義なき戦いを開始していたということなのか。
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