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この人の重大発言

写真 失業率の許容範囲は、せいぜい6%か6.5%だ
奥田 碩・日本経団連会長

11月6日の記者会見で、不良債権処理の加速がもたらす失業率の増加に触れて。

 10月末に発表になった9月の失業率は5.4%。過去最悪だった昨年12月の5.5%にかろうじて及ばないものの、90年代後半まで3%台を保っていたことを思えば、驚異的な高さといっていい。失業率の低さではアベレージヒッターだった日本がアメリカに逆転されたのは98年のことだった。
 竹中平蔵金融相が中心となってまとめている不良債権処理案が具体化すれば、銀行の支援によってかろうじて生き延びている企業の倒産が続出するといわれる。また、業績がよくても銀行の「貸し剥がし」によって倒産する中小企業も出ると予想される。すでに大手銀行7グループ12行は、来るべき不良債権処理の加速に備えて現在のリストラ計画を1〜2年前倒しし、来年度末までに計2万人の人員削減を計画している。
 大和総研の試算によれば、2005年度までに58万人の失業者が新たに発生するという。厚生労働省が想定している今後の失業率は7%。現在の雇用保険制度は失業率5%台半ばを前提として成り立っているため、保険料引き上げで対応せざるをえない。
 たしかに、10%台の失業率も珍しくなかったヨーロッパ諸国に比べれば、日本の失業率はたとえ7%まで上昇しても高すぎるとはいえない。だが、ヨーロッパでは失業手当や再就職のための教育システムが充実しており、失業に対する恐怖感が少ないという点が日本とは違う。日本経団連の奥田会長も、「他国では10%とか13%になっているから大丈夫という意見もあるようだが、日本人は情緒的だから、低い水準でも社会不安につながる可能性がある」との危惧を隠しきれない。社会不安を取り除くには、失業中の生活支援と再就職支援を充実させるしかないが、そのためには雇用保険料のさらなる値上げが避けられない。サラリーマンにとってほんとうに苦難の時代が到来した。



関連論文

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私の主張
(2002年)「躍動の一〇年」に向けて――我々が失業者一三万〜一九万と試算した根拠
西村清彦(東京大学大学院経済研究科教授)
(2002年)いま不良債権最終処理をためらえば日本は「衰退の一〇〇年」に突入する
小林慶一郎(経済産業研究所研究員)
(2002年)不良債権は不況が原因。最終処理を進めれば、日本経済は破壊される
山家悠紀夫(神戸大学大学院経済学研究科教授)
(2002年)ゼネコン淘汰策の錯誤――必死の再生をなぜ政府は見守れないのか
平島 治(大成建設会長、日本建設業団体連合会会長)
(2002年)活力のない企業は淘汰し再建可能企業は債務を削減して活力回復を
高木新二郎(獨協大学法学部教授)

議論に勝つ常識
(2002年)構造改革と失業についての基礎知識
失業はどれくらい増えるのか? 政府の対策は?
(2002年)不良債権処理についての基礎知識
なぜ不良債権は増え続けるのか?
(2002年)債権放棄についての基礎知識
破綻企業の法的整理と私的整理はどこが違うか?



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