10月末に発表になった9月の失業率は5.4%。過去最悪だった昨年12月の5.5%にかろうじて及ばないものの、90年代後半まで3%台を保っていたことを思えば、驚異的な高さといっていい。失業率の低さではアベレージヒッターだった日本がアメリカに逆転されたのは98年のことだった。
竹中平蔵金融相が中心となってまとめている不良債権処理案が具体化すれば、銀行の支援によってかろうじて生き延びている企業の倒産が続出するといわれる。また、業績がよくても銀行の「貸し剥がし」によって倒産する中小企業も出ると予想される。すでに大手銀行7グループ12行は、来るべき不良債権処理の加速に備えて現在のリストラ計画を1〜2年前倒しし、来年度末までに計2万人の人員削減を計画している。
大和総研の試算によれば、2005年度までに58万人の失業者が新たに発生するという。厚生労働省が想定している今後の失業率は7%。現在の雇用保険制度は失業率5%台半ばを前提として成り立っているため、保険料引き上げで対応せざるをえない。
たしかに、10%台の失業率も珍しくなかったヨーロッパ諸国に比べれば、日本の失業率はたとえ7%まで上昇しても高すぎるとはいえない。だが、ヨーロッパでは失業手当や再就職のための教育システムが充実しており、失業に対する恐怖感が少ないという点が日本とは違う。日本経団連の奥田会長も、「他国では10%とか13%になっているから大丈夫という意見もあるようだが、日本人は情緒的だから、低い水準でも社会不安につながる可能性がある」との危惧を隠しきれない。社会不安を取り除くには、失業中の生活支援と再就職支援を充実させるしかないが、そのためには雇用保険料のさらなる値上げが避けられない。サラリーマンにとってほんとうに苦難の時代が到来した。
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