政府の金融再生プログラムに対する銀行業界の反発は大きかった。竹中平蔵金融・経済財政担当相は、大手銀行の経営トップと会談し、理解を求めたが、銀行業界側は10月24日、「不良債権問題の終結に向けたアクションプログラムは自由主義経済の根幹を揺るがす」「突然のルールの変更は深刻な信用収縮を引き起こしかねない」と異例の共同声明を発表、行政訴訟も辞さない態度を示した。
銀行業界がなんとしても阻止したかったのは、当初の竹中プランにあった銀行の自己資本の算定ルールの見直しだった。融資先企業が破綻して債権の回収ができなくなると、損金は所得から差し引く形で法人税が軽減される。この税の還付をあらかじめ見込んで自己資本に組み入れておく(これを「繰り延べ税金資産」という)のが従来のルールで、竹中プランではこれを厳格に制限することになっていた。ところが、じつは銀行の自己資本の4割近くは繰り延べ税金資産で、これを制限されたら銀行は過小資本に陥ってしまう。大手銀行のトップたちが色をなしたのも当然だった。
結局、金融再生プログラムでは繰り延べ税金資産の制限を導入する時期を明確にしないことで合意をみた。だが、銀行業界のこうした反発は、「自らの経営努力の不足を棚に上げ、貸し渋りをチラつかせて追及をかわそうとしている」という批判を呼んだ。銀行の給与水準は依然として高いし、経営者責任が追及されることもない。佐高信氏は「みずほの前田社長はシステムトラブルの責任をとって辞めていなければならなかった人だ」と憤慨する。
みずほホールディングスに対する風当たりは、とりわけ強い。11月25日、大手銀行7グループ・12行は2002年9月中間決算を発表、通期で最終赤字となる見通しを示したみずほは、ついに従業員の年収を平均10%削減する方針を打ち出した。東京三菱も来年から退職年金を最大2割引き下げる方針。銀行業界のリストラがいよいよ本格化してきた。
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