日本経済を浮揚させるには、はたして不良債権処理が先なのか、景気対策が先なのか――まるで二者択一を迫るような議論がさかんだ。不良債権処理を徹底すれば、一部の銀行や企業は無傷ではいられなくなる。失業率はさらに上がり、デフレは深刻化する。かといって不良債権処理を先送りすれば、“ゾンビ企業”を延命させるだけで、いつまでたっても日本経済はリスクを抱えたまま推移することになる。現実には、どちらを先にではなく、どちらも大胆に実行しなければならない段階にきているのである。
このところ、新聞や雑誌はしきりに竹中平蔵金融担当大臣と銀行業界の確執をとりあげているが、東京大学の伊藤元重教授は、世論が不良債権処理のゆくえばかりにとらわれていると、問題の本質を見誤るという。
〈12月11日の国会質疑で、竹中氏が「経営の怠慢で公的資金注入に至れば、頭取には辞めていただく」と答弁〉
〈12月15日のテレビ番組で、竹中氏が「銀行を国有化して外資に売るなどということは考えていない」と“ハゲタカの手先”疑惑に反論〉
〈12月16日、竹中氏は与党や銀行業界の反発に配慮して特命チームの活動休止を決定〉
というように細かく報じられるわりには、たしかにデフレ対策についての議論は低調だ。
政府は、2003年度の税制改正大綱で、配偶者控除の廃止や酒・たばこの増税をするかわりに、1兆8000億円の先行減税を行う。02年度補正予算案による公共投資の追加で、03年度の実質GDPは0.6%、かろうじてプラス成長を維持できると見込んでいる。だが、伊藤教授は、「ここまで深刻化した消費者や経営者のデフレマインドを解消するには力不足としか言いようがない」と切り捨てる。この危機的状況を乗り切るには、小泉総理の指導力に期待する以外にない、というわけだ。
では、小泉首相にその力はあるのか。日朝首脳会談で一度は60%台まで回復した内閣支持率は、12月には再び54%(朝日新聞社調べ。日経は51%)まで落ち込んでいる。
|
|