地方分権一括法により、新税を課すことができるようになったのをうけて、東京都豊島区議会では放置自転車等対策推進税と狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)の二つの条例を二〇〇三年一二月に可決した。 豊島区は、駅周辺の放置自転車数が全国ワーストランキング上位に入る池袋・大塚・巣鴨駅等を抱え、対策費に年間八億円近くを費やしている。区の調査によれば駐輪の九割は駅の利用を目的としており、鉄道事業者は相応の負担をするべきとして、乗車人員一〇〇〇人あたり七四〇円の新税を課すとした。区は〇四年度の乗車人員をもとに、〇五年度から課税する方針で年間約二億円の税収を見込んでいる。 これに対してはJR東日本、東京メトロ、西武、東武、そして都交通局の鉄道五社から、放置者に課税しないで事業者だけ課税するのは違法として強い抗議が寄せられた。そこで総務省は〇四年四月に両者の言い分を聞く異例の公開ヒアリングを行った。両者の主張が最後まで対立していたため、総務省は同意・不同意の判断をいったん保留したが、九月、鉄道会社の理解を得られるよう努力すべきという意見書つきで同意を通知した。 新税が課せられれば、当然、豊島区以外からも同様の動きが出ると考えられるだけに、日本民営鉄道協会(七三社)、日本地下鉄協会(四〇社局)、JR旅客六社は「総務省の同意は到底承服できない」と共同コメントを発表(朝日新聞〇四年九月一四日付)。実際に課税されれば訴訟も辞さない構えである。 総務省としては、地方分権推進という大きな流れのなかで、地方税法が不同意の要件としている三要件を満たさない以上、同意とせざるを得ない。しかし、事業者を狙い撃ちしているとの批判も無視できず、意見書付きの同意となった。麻生総務相も同意の翌日の記者会見で「この税が適当といった覚えはない。法律に違反していなければ何をしてもいいのか。政策のあり方としては疑問が残る」と述べた(読売新聞〇四年九月二一日付)。 ワンルームマンション税は、床面積二九平方メートル未満の住宅を含むマンションやアパートを建築する際、建築主に対して一戸あたり五〇万円を課税するものである。豊島区では三〇平方メートル未満の住宅の割合が全体の四割にも達し、その割合は二三区のなかで最も高いところから、建設を抑制し、住環境の悪化を食い止めることをねらっている。これについては総務省は三月末に同意を通知し、区側は六月一日より同税を実施した。 豊島区税務課は〈ワンルームの排除でなく、バランスの是正が目的。抑制と同時に税収入を良好な住宅の供給支援に投入することもできる〉(産経新聞〇四年三月三一日付)と説明するが、都心で多くのワンルームマンションを手掛ける武蔵野市のトーシンの佐藤信哉社長(首都圏中高層住宅協会会長)は〈課税しても業者への土地売却価格が下がるなど地主に負担がかかるだけで、建設抑制につながるかは疑問〉(日本経済新聞〇四年三月三一日付)と批判している。 放置自転車もワンルームマンションも大都市共通の悩みであり各地で様々な取り組みがされているが、課税による規制は初めてで、全国的に注目されることとなった。
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