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論 点 「新型学校は成功するか」 2005年版
学校はサービス業。株式会社立中学校は消費者に上質の教育を提供する
[教育改革についての基礎知識] >>>

とりうみ・みつじ
鳥海十児 (朝日学園代表取締役社長)
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▼対論あり

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学校間競争は公平に行われていない
 私は学校というものは一種のサービス業であると考えている。したがって教職員はそのサービス業の従業員であるといえる。学校は「教育」という商品を児童生徒やその保護者という消費者に提供し、授業料等という名称の対価を受けとる。
 消費者はたくさんの選択肢のなかから自己のニーズに合う学校を選ぶことができるのが望ましい。当然、選択した商品を購入できるだけの資格(経済力・学力等)は必要だが。商品提供者である学校側は「より良い商品をより安価に」提供すべきであるし、その結果としての提供者である学校間には競争があるべきで、消費者のニーズに合った商品を提供する学校が実績をあげ、生き残っていき、そうでない学校が退場するのは当然の姿である。
 公正な学校間競争のためには、各学校が同じような基盤に立って「教育」という商品の品質向上、研究開発に努め、消費者満足度を向上させるべきものと思う。ところが助成というシステムにおいて、つねづね疑問に思っていることがある。(公立の義務教育学校はその存在意義からとりあえず論外としても)少なくとも私立学校において、設置者の違いによってその経済的基盤の大きな要素である私学助成にゼロから満額までの大きな差がついていることだ。後でも述べるが、これは「同じ基盤」という点でおかしい。
 ちなみに私どもの株式会社朝日学園は「非営利の株式会社」として定款が認証されており「利益は全額を地方公共団体等に寄付する」と定めている。だから、「株式会社は営利企業なので税金による私学助成はしない」という論は当たらない。公正な同じ基盤での競争という点では、株式会社立やNPO法人立の学校にも私学助成をするか、または学校法人立の学校であろうと、私学助成をしないか、どちらかではないだろうか。国家の教育政策としての是非は別にして、とにかく学校間競争が教育の向上のためには必要である。


公立中の五年分の授業時間
 「将来の国際社会で活躍できるような人材を育てたいが、そのためには中学高校段階では何が必要なのか」「コミュニケーション能力と英語力をつけること、そして大学教育に十分に耐えられる基礎学力をつけることがどうしても必要だ」。
 全国初の株式会社立「朝日塾中学校」はこんな考えから出発した。教育特区による研究開発推進学校に認定された結果、ある程度は教育内容が自由化されて、文部科学省の学習指導要領の枠からはみだした教育が特別に認められた。そうして、岡山県御津町にハイレベルの進学校をめざした本校が開校したのである。
 教育内容の特色としては、
 (1)コミュニケーション能力を養う教科として、全国初の「ディスカッション科」を開設し、週三回の授業で「自分の意見を持ち、発表できる」「他人の意見を聞き、自分との相違点について協議調整できる」「論点について肯定否定両方の立場での意見が出せる」能力の養成をする。
 (2)英語については、週六回の英語の授業時間に英語学習をするのは当然として、その他に美術・体育・音楽の授業も外国人教員と日本人教員とで英語を用いて授業をしており、パソコンによる個別英語学習も加えて、中学一年の二月には全員が英検三級に合格するのを目標としている。
 (3)難関大学に合格できる学力をつけるため、国社数理英の五教科では、公立中の一・六七倍の授業時間がある。つまり朝日塾中学校の三年間では公立中の五年分の授業時間があり、しかも習熟度別授業となる。放課後は毎日二時間(寮生は五時間)、校内での自習時間がある。これは希望者対象であるが大部分の生徒が選択している。
 (4)幅広い経験を積ませるため、地域との交流を図るためにいろいろな体験学習にも取り組んでいる。紙漉き体験では一人ひとりが「自分の和紙」を作ったり、農業体験では「自分のトマト・ナス・キュウリなど」を植えて収穫し、備前焼体験では「自分の焼き物」を作るなどした。学校周辺の豊かな自然は心豊かな生徒を育んでくれることと期待できる。
 二〇〇七年度(平成一九年度)には中学校の隣に「朝日塾高等学校」を開校する予定である。


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論 点 「新型学校は成功するか」 2005年版

対論!もう1つの主張
新時代のリーダーを育成するため、経済界が創る中高一貫校の設計図
磯部 克((財)海陽学園設立準備財団理事(事務局長))


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personal data

とりうみ・みつじ
鳥海十児

1934年京都府生まれ。父の事業の失敗により立命館大学大学院を中退。その後、タクシー運転手、教科書会社営業マンなど様々な職業を体験するが、自らが成就できなかった学問への思いを抑えがたく、75年、岡山市に朝日塾を設立(後に学校法人化)。つづいて幼稚園・小学校を設立し中学受験などで実績をあげる。04年、教育特区に認定された岡山県御津町に全国初の株式会社による中学校を開校。公立の1.67倍の授業時間、トップ校への合格保証制度など独自の教育を行っている。



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